サイクロ

□『feline fang』
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仕舞っていた携帯がチリリチリリと音を上げた

「・・・トキマツ、ちょっと頼む」

街中で携帯を取り出すかのような緊張感の欠片も無い動作

その隙を付いて手下Bが刃物を繰り出す

しかし、夜の帳に同化していたトキマツがマタタビの声に反応して空から急降下してくる

何事かと一瞬怯んだ隙を付いてその目を抉り、悲鳴を上げている間に心臓へ硬質化された鋼の翼を突き立てた

手下達はその光景を目の当たりにし、遠巻きに囲むだけで近付こうとはしない

「・・・もしもし?」

『よぅ、マタタビ。そっちの様子はどうだ?』

「キッドか。んー・・・数が多いな。ミーくんが薬を盛った筈なんだが」

『何か飯を食ってない奴が結構いるんだと。ミーくんもそれでちっと遅れる』

「成る程な・・・了解した」

『オイラ、そっちに手伝いに行かなくて大丈夫か?』

「問題無い。こちらにはトキマツもいるしな・・・トキマツ、そういう訳だ。俺達で帰路を拓くぞ」

「カァーッ!!」

「コッチは任せろ。やることやって早めに来いよ?」

『おうよ!!』

電源を切った携帯を元の位置へと放り込み、左手を上げる

其処にバサリと音を立てながらトキマツが留まった

「まぁ、無駄に数は多いが俺達の相手ではないからな」

「兄貴、自分、腹が減りました!!」

「そうだな。小腹が空いたから美味い飯が食いたいな」

「自分、肉が食いたいです!!」

「お前はいつも肉じゃねぇか」

「自分、肉が大好物ですから!!ミーくん先輩の美味い飯が食いたいです!!」

「んじゃあサッサと片づけるか。トキマツ、お前は後方に行け!!」

「お任せあれ!!」

マタタビの腕から勢いをつけて羽ばたいたトキマツが音を残して一瞬で闇に消えた

次の瞬間、遠くの方から悲鳴が上がる

『アイツだ!!アイツを先に始末しろ!!』

手下達は後方の目に見えないトキマツの恐怖に怯えた

ならば前方の目に見えて手ぶらなマタタビを先に仕留めようと駆け寄ってくる

「・・・嘗められたもんだな。この俺を殺るつもりか?」

笑みを浮かべながら赤い外套を翻し、両手を交差させると鈍い輝きが数本、閃く

「ハハッ!!この俺が手ぶらだって?何の冗談だ!?」

放たれたクナイが手下CDEFGHIJ達の額、瞳、首に突き刺さり絶命させる

『死ねぇッ!!』

死角になっている右側から迫った手下Kがナイフを振りかざす

しかし、振り上げた筈のその腕は、肘から先が無かった

『ぎゃぁぁあああ!!!!』

「コイツは俺のとっておきだ」

次の瞬間には手下Kの首と胴体が永遠の別れを交わした

手元に戻ってきたすてるすブーメランを構えながら、マタタビはゆっくりと手下達の群れへと歩き出す

「冥土の土産に教えてやるよ。俺の名はマタタビ。俺のあだ名は歩く武器庫だ」
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