サイクロ

□『feline fang』
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土煙を上げながら崩れていく建物を背に、二人の男が歩いてきた

彼等の服装に乱れや傷や染みは一切見えない

歩を進めつつ弾痕と亡骸だらけの辺りを見回し
『今回は外が多かったね』
『中まで手が廻らなかったんじゃねぇの?』
と笑い声混じりの会話を交わす


二人が近付いて来たので車で寛いでいたマタタビは閉じていた左目を開け、微笑んだ

先程の獣のようなものとは違って優しげな笑みだ

「よぉ。ご苦労さん」

「おうよ」

「以外と早かったな」

「それがさぁ・・・クロの奴が面倒だからって、まーた建物ごと斬っちゃったんだよ」

「アレが一番手っ取り早いんだよ」

「・・・だからアレか」

またお前、派手に壊したな〜とマタタビは笑う

クロは早く帰りたかったんだよとそっぽを向いた


「ミーくん先輩!!自分、肉が食いたいです!!」

屋根に留まっていたトキマツがミーくんにリクエストをしている

「トキマツっていっつも肉だよね」

「自分の好物ですから」

「ミーくん、俺にも何か作ってくれ」

「オイラにもな〜」

「オッケー!!家に帰ったら料理人に全部お任せだよ!!」

「でも今から帰ったら、もう夜食じゃなくて朝飯になるな」


笑い声を残して車は走り去る


風の噂が流れて消える

『feline fang』が通った後には

瓦礫と亡骸と笑い声しか残らないと・・・





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