SSS

書きたいことを殴り書く!!
◆夢見る世界へ (花京院) 


「モノクロの雲を抜け、闇を払い、色鮮やかな世界へようこそ」と誰かが叫ぶ。
多分それは自分の中から聞こえた産声だ。
いつかとまだかと待ち続け、遠い昔に諦めてしまった自分が自分でいられる場所。

最初の出会いはその眩い色に気付く暇も無く世界は闇色に染まり、ただただ言われるがままに動き続けるだけの操り人形と成り果てた。
アレが望んだ姿かと問われれば答えは否しか無いだろう。
自分が自分でないのだから。

二度目の出会いはそんな闇色の眼から見たはずなのにキラキラと輝いていた。
体は言うことをきかないのに目が離せなくなった。
こんな風に自分もなりたかったと痛みの中で思いながら瞳を閉じた。

三度目の出会いはそう、闇が晴れかけた瞬間だった。
あの眩い輝きが命を狙った自分を何故だか命懸けで救おうとしていた。
少しずつ闇が晴れていく中、またモノクロの世界が自分を包むのかと何処かで諦めていたのに総ての闇が払われた途端に世界は色彩で溢れかえった。

ぶっきらぼうに顔を逸らす目の前の輝きが、ただ眩しくて優しくて涙が溢れ落ちた。

人前で泣いてしまうなんていつ以来だろう。
まるで子供の自分が戻ってきたみたいじゃないか。
閉じ込めていた感情が戻ってきたみたいじゃないか。
古くからの友人にそう告げてみれば彼は嬉しそうに宙を舞った。

キミの前以外であんな姿を曝すなんて恥ずかしいとは思わないのかい?

何故そんなことを思うの?
ボクはやっとキミと一緒にいられるんだよ。それが嬉しい。

嬉しいのかい?
今までだって一緒にいたじゃないか。

だってみんなはボクを知らない。
でも彼らはボクを知ることができる。
ボクもキミも知ってくれる。
キミとボクは一緒にいられる。
もう本当のボクでいられる。

……そうかな

そうだよ。

…キミの力を借りてもいいかい?
一緒にいたいって言っちゃおうよ
明日になったら
朝になったら

あぁ、明日からの世界はきっと今まで見たことも無いくらい色鮮やかに染まる。



花京院さんの出会いの心境を考えてみたんですがね、こんな感じなんです。



2014/07/06(Sun) 05:41 

◆大切な彼ら 


助けてと声が聞こえた
自分の外からだ

汗と涙をダラダラ流しながら
それでも手を止めようとしないよく知る科学者の声だ

その声に応える術を我は持たない


助けてと声が聞こえた
自分の中からだ

暗闇と静寂に抗いながら
それでも徐々に侵蝕されていくよく知る子猫の声だ

その声に応える術を我は持たない


遠い昔に一度体験しているあの闇が、また傍まで迫っている

狡賢い悪魔が科学者に、子猫に忍び寄っているのが分かる

嗚呼、そんなことは許さない
我はまだ『此処』にいる

科学者が力を貸せと言うのなら

子猫が力を貸せと言うのなら

我はもう一度奇跡を起こそう


どうかどうか
この世界に存在しない哀れな機械が起こす小さな小さな奇跡よ

誰よりも何よりも大切な彼らを導け

二人を繋ぐ一筋の光であれ


2014/04/10(Thu) 05:41 

◆愛しい貴方へ 


暗い闇の中でボクは眠る
寒くて怖くて寂しくてボクは膝を抱えて眠る

一切の音が消えた静寂に頭がおかしくなりそうだと、冷静に考えるボクが存在する

何一つ見えない絶望に壊れてしまいそうだと、冷静に考えるボクが存在する

此処は何処だろう、独りは嫌だ

眠ろう、眠ろう
何も感じなくなるように瞼を閉じてしまおう
何も分からなくなるように耳を塞いでしまおう
何も考えないように心を止めてしまおう

なのにそんな中、誰かがボクの頭を優しく優しく撫でている
目を開いても誰もいない
誰かいるの?
呟きは闇に溶ける

でも目に見えない何かに頭は撫でられ続けている

知っている気がする
覚えている気がする
ボクの中に誰かがいる気がする

懐かしくて優しくて大好きだった
もう何処にもいないキミが


そう思うと寒さも怖さも寂しさも総て吹き飛んでいった

あとはまた目を覚ますだけ

「キミはいつでもボクの中にいるんだね」


ボクの中に眠る愛しい貴方へ


どうか、もう一度力を貸して下さい


2014/04/10(Thu) 05:10 

◆眠るキミへ 


赤い血を撒き散らすようにオイルが辺りに広がる。

鉄臭さの代わりに息が詰まる香りが漂う。

目の前の光景が夢なのか幻なのか現実なのか分からない。

分かっているのはただ一つ、これに似た景色を昔一度体験している。

大丈夫だ、狼狽えるな。

自分はあの時ちゃんと子猫の命を救えたのだ。

昔より更に技術を身に付けたのだ。

何度も同じ手術を体験しているのだ。

今度だって失敗しないさ。

もう一度、蘇らせてみせる。


彼の中に眠る愛し子よ。

どうかワシに力を貸してくれ。



2014/04/10(Thu) 04:37 

◆優しい夢の嘘 


死ぬ夢を視た。

春先の柔らかい日差しの中、キッドに見守られて穏やかに死んだ。

恨みも憎しみも全部ひっくるめて奴への愛しさだとその瞬間漸く理解して、後悔した。

もっと一緒にいたかった。
もっと優しくしてやればよかった。
もっと抱き締めてやればよかった。
もっと名前を呼んでやればよかった。

もっと、愛してやればよかった。

出来なかった『もっと』に縛られてオレはキッドの傍を離れられなかった。


落ち込んでいるキッドをずっと見つめ続けた。

その背中に凭れ掛かれば通り抜けて、触りたくても触れなかった。

名前を呼んでもいくら叫んでも届かない。

死んでこんなに後悔するなら生きてる内に『もっと』


出来なかった、やらなかった『もっと』に雁字搦めにされてオレは動けなくなっていく。

『もっと』
『もっと』
『もっと』
『もっと』

酷く瞼が重くてオレは目を閉じる。


『キッド…オレは…!』


夢の中で眠りながらオレは泣きじゃくった。


後悔で動けなくなったオレは体を持たずに想いだけでこの世に蘇っていた。

いつもの面子と当たり前のように繰り返される穏やかで刺激的な日常。

それは今とよく似ていて…。





目を覚ました時、夢でよかったと涙が零れた。



優しい嘘の前


2013/11/12(Tue) 15:40 

◆優しい夢 


「ちょっと来いっ!!」

マタタビくんが死んでずっと落ち込んでいたクロが急にやって来た。

普段なら騒動に巻き込まれたくなくてフジ井家に近寄らせないクロが何故かボクの手をグイグイ引っ張っている。

「ねぇクロ、どうしたんだよ」
「お前が来れば分かるんだよ」
「マタタビくんが死んじゃって寂しいのか?」
「…ちょっと違ェ」
「ちょっと?」
「オイラの気のせいっていうか…何かおかしいんだ」
「何が?」
「…マタタビがいるんだよ」
「何処に?」
「家に」
「だってマタタビくん死んじゃったよ?」
「だから…幻覚かもしれねェ」
「……」
「お前にも見えたら幻覚じゃねぇだろ?」




「よぅミーくん、差し入れかい?」

「…マタタビくんだ」
「やっぱ幻覚じゃないみたいだな」





優しい嘘の前


2013/11/12(Tue) 14:53 

◆優しい嘘 


たった一匹に知られてはいけない秘密がある。
それは彼の世界と宿命を根底から揺さぶるもので故に現状を守らなければならない絶対条件。

彼を影から守り支え、見えるように守り支え、それを決して気付かれてはならない。
本当はそんな必要も皆無なのに彼がいつかほんの僅かな違和感に気付くその瞬間まで全力で隠し続ける。

それが我々の日常の一部になった。

「ハァ…死ぬかと思ったぜ」
「…お前は死なねェだろ?化猫なんだから」
「拙者はただの生身の猫だ」
「でもマタタビくんってば本当に化猫になっちゃったのかもしれないね」

そんなことは有りはしない。
そんなことは有り得ない。

彼は我々とはもう違う。
生身や機械なんてそんな可愛いモノではない。

彼はもう別の世界の住人だ。


彼が気付くのが先か。
我々が朽ち果てるのが先か。

叶うならそれが同時であればいい。


2013/11/12(Tue) 14:30 

◆歪んだ愛 


彼にはきっと優しさと希望が詰まってる。

唐突にフランスの大怪盗がそんなことを言い出した。

「お主…熱でもあるのか?」
「いや、頗る健康」

じゃなきゃ此処まで来れないじゃないかと返されて、まぁ確かにと思った。

しかし先程の発言は一体…。

「…だから不安も疑いも優しさと希望に包まれて見えなくなってしまうんだ」

それは理想的な考え方で、反面諸刃の剣でもある。

「故に彼は彼を取り巻くどす黒い闇を知らない」
「……」
「故に我らはその闇を知られてはならない、だろ?」
「…喧しい」
「まぁ知った所で彼が我々を嫌う、なんてことは万が一にも有りはしないんだろうが」

明日の朝はいつものように笑ってくれるさ。

足元に転がる物言わぬ屍を二人で見下ろす。

「なにせ我ら二人の優しさも希望も一心に詰め込んでいるんだから」
「我輩はただ笑っていてほしいだけであるよ」

だから障害を取り除くだけだ。

「恐ろしい程の愛だねー」
「喧しいぞ同類が」




彼の笑顔の為ならば自らの手を汚すことも厭わない大人二人。


2013/10/02(Wed) 00:08 

◆no title 


「うおおおおー…アッチー…」
 真夏の茹だるような暑さにマタタビは途方に暮れてしまった。
昔はまぁまぁ耐えられる温度だったが、年々気温が上がっていき遂には猫の体温と同じくらいの暑さになってきた。
流石にこの暑さの中、縁側で昼寝なんて無理だ。
陽当たり良好過ぎて寝ている間にカサッカサのミイラになってしまう。
 本来猫は自分の過ごしやすい所を見つけるのが上手い。
マタタビもまた例外ではない(寧ろ最高ランクだ)が、クーラーの無いフジ井家は適温な部屋が無い。
 扇風機の前に居座ってもいいが段々と寒くなっていき最後には風邪を引く。
やはり扇風機を使って風通しを良くした家の中で涼しくなる夕方まで暑さに耐えるしかない。
「あー…何か飲むかね」
 とりあえず一瞬でも涼しくなるためにマタタビは冷蔵庫を目指した。
 扉を開けている僅かな時間だけだが、目に見えてひんやりとした空気が火照った体を冷やしてくれるあの一瞬の感覚が結構好きだった。
(今度倒壊したらクーラー付けよう。やっぱ夏はクーラー必要だよな。そうしようそうしよう)
熱に浮かされぼんやりし始めたマタタビが冷蔵庫の取っ手に手を掛けた。
この一瞬後には涼しい空気が…と期待して扉を開ける。

「よう、マタタビ」
「わあああああ!」

 背中が一気に涼しくなった。冷や汗が噴き出した、もしくは背筋が凍った。
涼しい空気がいつもより冷たい気がするのはきっとそのせいだ。
 冷蔵庫の中には丸まったクロが入っていて扉を開けた瞬間、二匹は正面から見つめ合った。
片方は呆気に取られ、もう片方は予想だにしなかった事態に心底驚いた。
「ききき貴様!こんな所で!何をしている!?」
「何って…涼んでるに決まってんだろ〜オイラ暑くてオーバーヒートしそう」
 何でもないように言うが生身の猫がそれをやったら酸素が無くなって数分であの世逝きである。
(さいぼおぐ…恐るべし)
 未だ激しく動く心臓を庇いながらマタタビはクロから視線を逸らした。
「ほらほらマタタビくん、涼しかろう」
 無遠慮に触れてくる金属の体は着ぐるみに包まれて程良く冷たい。
さながらタオルに包まれた保冷剤のようだ。

飽きた。

真夏に暑いからと冷蔵庫を開けて涼もうとしたら中からキンキンに冷えたキッドが〜って話。


2013/09/07(Sat) 01:09 

◆ザ・区別 


仁王立ちするドラメッドと彼の前でキョドキョドと落ち着かないドラリーニョ。
「さてドラリーニョ、我が輩に何か言うことがあるんじゃないかね?」
「えーとえーっと」
「ほら、早くしないと我が輩怒るであーるよ」
「ドラメッド!壷割ってごめんなさい!」
「うむ、今回は許してあげるであーる。次からはちゃんと気を付けるであーるよ」
「わーいドラメッドありがとー!!」
「(…ま、直ぐ忘れてしまうのはしょうがないのであーる)」


仁王立ちするドラメッドと彼の前でキョドキョドと落ち着かないドラパン。
「さてドラパン、我が輩に何か言うことがあるんじゃないかね?」
「いえ…あのー…」
「……」
「ドラメッド!壷割ってごめんね、許してチョ☆」
「…我が輩怒ったであーる!!」
「うっそぉー!何で!?」



2013/08/03(Sat) 00:49 

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