SSS

書きたいことを殴り書く!!
◆愛とも殺意とも呼べない感情 


目を覚まして辺りを見回す。
探すのは黒い毛玉。
もう癖になっているようで見回した後に「アイツはいないんだった」と思い出す。
溜め息と共に眼帯越しの抉れた右目に触れてみる。
元気でいるだろうか。
飯は食っているだろうか。
笑っているだろうか。
オレを覚えているだろうか。

それとも、もう死んでしまっただろうか。

何かが渦巻く胸に爪を立て内臓を掻き毟りたい衝動に駆られる。

オレはアイツを探し出して一体何がしたいんだろう。

右目の借りを返すのか?
会って話がしたいのか?
抱き締めてやりたいのか?
いっそ殺してしまおうか。

自問自答を繰り返し、今日も胸の痛みを抱えて探し続ける。


ただひたすらに、一匹の黒猫の姿を求めて。


2013/08/01(Thu) 14:34 

◆連題 いつもそばにいる 


マタタビが死んだ。最期に一つの言葉を残して…。
「いつもそばにいる」
その言葉の意味が分からない。
周りの連中はみんなオイラを憐れんだ目で見る。
離れるわけ無いのに。どんなに時が経とうと周りに誰もいなくなろうと。
あんなに離れていた時だっていつも傍にいる気がしていたのに。
今更そんなこと言われたって分からねぇよ…。
生と死がそんなに凄いのか?
オイラとアイツを隔てるのか?
そんなわけない。アイツはどんな時だって傍にいたんだ。
オイラの傍で笑って泣いて怒って呆れて「キッド」って呼んでたんだ。
姿が消えたって声が聞こえなくたって触れなくたって傍にいるん だ。
だから悲しむ必要なんて無いんだ。
だから悲しむ理由なんて無いんだ。
だからだからだからだから。
涙よ止まれっ!!


2013/07/02(Tue) 11:15 

◆連題 いつもそばにいる 


肉体を失って誰かに触れる体が無くなった。
肉体を失って誰かに伝える声が無くなった。
肉体を失って沢山のモノを失くしたのに大事なモノは無くならなかった。
この気持ちとこの記憶とこの姿。
これさえあれば傍にいられる。
笑う誰かも泣く誰かも怒る誰かも呆れる誰かも見つめていられる。
離れることはもう永遠に無い。
「後ろを振り向けよ」と放つ声は永遠に聞こえることは無いだろうが。
「これでもうお前を独りにしないですむ」
そう 呟く声はもう誰にも届かないだろうが。
聞こえない声で名を呼び、見えない腕で抱きしめた。
「いつもそばにいる」


2013/07/02(Tue) 11:14 

◆連題 いつもそばにいる 


キラキラ輝く光が見えるんだ。
他には誰も見えないけれどボクにはちゃんと見えてるよ。
君達は生と死なんかじゃ離れられないんだ。
越えられない壁なんて無いし渡れない溝だって無い。
見えない聞こえない分かり合えないけれどそれでもきっと大丈夫なんだよ。
だって君達はいつでも通じ合っている。
体があっても無くても心がこんなに傍にいる。
聞こえないはずの声が届き、届かないはずの声が聞こえている。
「いつもそばにいる」
想いは、ちゃんと奇跡を起こしているんだから。


2013/07/02(Tue) 11:13 

◆no title 


「此処にも拙者の居場所は無かった」
そう呟きマタタビは瞳を閉じる。
幼い頃過ごした思い出の地は遙か彼方に消え去り、もう手は届かない。
親も兄弟も仲間も消えた。
遺ったものは消えた右の目と胸の傷。
自分をマタタビと呼んでくれたあの懐かしい声は果たして今も生きているのだろうか。
「キッド…貴様は…」

生きていてほしい。そして殺したい。
死んでいてほしい。そして弔いたい。

逢いたい。逢いたくない。
殺したい。殺したくない。
許したい。許したくない。
愛したい。愛したくない。

相反する二つの気持ちがグルグル回り巡り、足は気持ちは止まることを知らず。

ただ、もう一度声が聞きたい。


2013/05/15(Wed) 11:33 

◆化猫 



 静かな昼下がり、車がフジ井家の庭に飛び込んだ。
ナナの電車のように縁側に寸止めじゃない、飲酒運転の暴走車が家の中にまでめり込んだ。

 定位置で寝ていたクロは跳ね飛ばされ、家の中で寝ていたマタタビは崩れた家の下敷きになった。

恐慌状態に陥りながらも必死に瓦礫を押し退けると、腹に木片が突き刺さったマタタビが冷たく倒れ伏していた。



「忘れてたけどお前…普通の、生身の猫だったんだな」

晴れた空を眺めながらクロは冷たく、動かなくなったマタタビの頭を撫でる。

いやぁ、すっかり忘れてたよ。そうだよな。オイラと違ってサイボーグじゃなかったんだよな。

もっと言いたいことがあった。
もっとやりたいことがあった。
もっともっともっともっと…。

「なんか、お前なら生き返りそうなのにな…」
「その通りだ」

独り言に返事が返ってきた。
幻聴が聞こえるなんてオイラも相当だな。

「もう一回お前の声が聞きてぇよ」
「聞いてるだろうが」
「なんかお前の声が聞こえる」
「喋ってるからな」
「生きてる時と全然変わらねぇ」
「生きてるからな」
「……ん?」

クロが視線を空からマタタビに移す。

「ぎゃああああ化猫ぉぉおおっ!?」
「だから否定しなかっただろうが」



2013/01/19(Sat) 01:21 

◆愛の境目 



後悔は後からするものであって先には絶対できないものだ。

サイボーグの高性能な目でも奴を見つけることが出来ない。
あの時の自分をブン殴りたいと後悔したのはもう数時間前のことだ。

目に見えてというか、目の前で奴が消えた。
些細な喧嘩の最中に煙の様に姿が消えた。
一言『消えちまえ』と言ったらその通りに。
刹那に見えた奴の顔が泣きそうに歪んでいたのをオイラの目はちゃんと捉えていたのに。
もしかしたら泣いているかもしれない奴の姿を何故かオイラは見つけられない。
奴はいつもオイラを見つけてくれたのにオイラは奴を見つけるのが下手くそだ。

「『愛』の違い…か」

どんなに頑張っても友情の重さは愛情の重さに適わない。
しかも友情+愛情なんてオイラが勝てるわけがない。
「マタタビ…ゴメン」
それがどういうことか今の今まで気付かなかった。

「何を泣きそうになってるんだ。この馬鹿キッドが」

小さな声が足元から聞こえてバッと視線を下げると、腕を組んだマタタビがオイラを睨んでいた。

「マタタビ…」
恐る恐る掌に乗せて視線が合うように持ち上げる。
奴の目元が少し赤いのを捉えて、不覚にも泣きそうになった。
「貴様…拙者に消えろとは本気で言ったのか?」
「いや、あれはつい勢いで…悪かったよ」
「…ケッ!こんなに小さくしやがってこの馬鹿キッドが。また元に戻るまで時間が掛かるじゃねぇかこの馬鹿キッドが。責任取りやがれこの馬鹿キッドが」
「うっせーな!何回も馬鹿馬鹿言うんじゃねぇよ!任せろ馬鹿野郎!」
「……はっ?」

「直ぐに元の大きさに戻してやるから覚悟しやがれ!」


2012/12/30(Sun) 05:58 

◆愛の始まり 



掌に乗っかるくらい小さくなってしまったマタタビをオイラはどう扱えばいいのか分からない。
『愛を寄越せ』と奴は言う。
愛って何だよ…オイラがお前を好いてるってのは極々普通の、世間で通用する一般的に言う友情だ。
「友情でお前、元に戻れんの?」
「……」
「何とか言えよコラ」

指で頬を突っついてやれば嫌そうな、そりゃもう心底嫌そうな顔で溜め息を吐かれた。
いや、溜め息吐きたいのはこっちだから。オイラの方が何倍も溜め息吐きたいから。

「貴様にとっての友情が、拙者にとっても友情とは限らない」

聞き漏らした筈の小さな声が何故か頭の中で反芻される。
いや、聞こえてるじゃん。
いや、きっと気のせい。
いや、ちょっと待てよ。
いや、それって……えっ?

オイラの中で『友情』が形を変え始める音がした。


補足→マタタビは愛を貰えないと体がどんどん小さくなっていき、最終的には見えなくなってしまうって設定。



2012/12/30(Sun) 05:15 

◆愛? 


「愛している」と呟いても返事は返ってこない。
夢の中へ旅立った子供は幸せそうな笑顔を浮かべている。

彼が起きていたらとてもじゃないが言えない。
この「愛している」がどういう意味なのかも分からないのに。

「好き」と「愛している」の違いは何だ?
ロボットにそれを区別する機能は備わっているのか?
そもそもこの感情は他の友人と何処が違う?

「好き」のラインに何故か彼がいない。

彼がいるのは「好き」から枝分かれした、彼のためだけに作られた特別な線の上。

『友人よりも人間よりも何よりも優先すべき特別な存在』に配置されたのは彼ただ一人。

「吾輩も立派な欠陥ロボットであるな」

この「愛している」が人間の言うそれと同じものなのかが未だ分からないのだ。







2012/09/13(Thu) 02:39 

◆RADの魔法鏡聴きながらリニョ→←メッドでリニョ独白書いたらどんどんバッドエンドになっていった。 



ぼくが作られたのが間違いでも。
一生懸命それを否定してくれたけど。
きみはいつもぼくを守ってくれた。
この記憶ももうすぐ消える。

辛そうなきみの声。
手を繋いでくれてありがとう。
あの日のようにもう手を繋げないけど。

あれ?何を言ってるの?
どうしよう聞こえない。
聞こえないよ…。

もう少し残って。
ぼくの記憶。
そこにいるんでしょ?
泣かないで。
泣かないで。
ぼくは大丈夫。
だから笑って?


一緒にいられなくてごめんね。
きみが何か言ってる。
多分、ぼくの名前だ。
もう忘れちゃったぼくの名前。
全部忘れても大丈夫。
きみを大好きって気持ちだけは絶対に消えないよ。
ぼくはぼくのまま消えていく。
修理はできない。
どんどん壊れていくの。

もう何も見えない。
最後にきみが映ればいいのにね。もう声が聞こえない。
もうきみが分からない。
きみの声が聞きたいのに…。


この気持ちだけはずっと一緒だよ。
最期にきみを映したぼくの目はもう使い物にならないけど。
もっと見ていたかったな。
きみのこと。

大好きだよ。
さよなら。
さよならなんてしたくない。
もっと見たい。
きみを映したい。
もっと見たいよ。
もっと見たいよ…。

名前を知らない大好きなきみを。



2012/09/12(Wed) 23:03 

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