過去拍手 BOOK
□その理由
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お前さんには、言えやしないけど。
その理由
携帯から指定着信音が流れて、メールの受信を知らせる。
聞き慣れたこのメロディー、愛しい彼女からのメール。
すぐにフォルダを開いて内容を見ると、放課後一緒に帰れるかどうか確認するものじゃった。
「もちろんそのつもりじゃよ…」
口ではそう言いながら、返信しないままパタン、と携帯を閉じる。
そう簡単には返信してやらんぜよ。
じゃってお前さんは返事が来んかったら、返ってくるまでずっと俺のことを考えながら待ってくれるじゃろ?
お前さんの頭が、心が、俺でいっばいになればいい。
そんな独占欲が顔を出すから。
もうしばらく、このメールに気付かないフリをする。
fin.