恋愛未満







おつかいの帰り道。
薬局の前に人だかりができていた。
なんだろう、と思って電柱によじ登ってみると、人だかりの中心には知った顔。


「あ、あの!ぐ偶然チケットが遊園地に入っちゃって…」
必死にカエルの置物に話し掛けているのは良牙だった。
「あかねなら友達と旅行だとかで昨日からいねーよ」
おれはポン、と良牙の肩を叩いて言った。
「らららららんまっ!?」
異常に驚く良牙。
「これ、明日までじゃねーか」
「…それがどうした」
「一緒に行くやついねーならおれが一緒に行ってやるよ。どうせ暇だし」
「えっっ」
「いつもの空き地に居ろよ。明日迎えに行くから」



そのときは、本当に暇潰しのつもりだった。
実際あかねもいなくて暇だったし。





翌日
おれたちは迷子になることもなく(当たり前だ、おれが付いてるんだから)無事遊園地に到着した。良牙はずっとソワソワしてて様子がおかしかった。
遊園地なんて初めてなのかも。
おれたちはメリーゴーランドみたいなかわいらしいアトラクションには目もくれず、ひたすら絶叫系に乗りまくった。
しっかし、こいつと和やかに遊園地で遊ぶ日が来ようとは。自分でもびっくりだ。

「次、あれ行こーぜ!」
おれが指指したのは、一番人気のジェットコースター。
「お、おい!あれって…」
「大丈夫だって!平気、平気!」
おれは嫌がる良牙を引っ張って列に並んでしまった。



しまった、と思ったのはジェットコースターが一番大きなメインの滝を落っこちる時だった。
だから良牙は嫌がったんだっ!
当然遊園地にはお湯なんてない。
ブタと男の服を持って帰るのも、こんなとこに一人取り残されるのも嫌だ。


「伏せろ!」
おれは良牙の上に覆いかぶさった。





良牙は無事人間の姿で生還。
おれは当然水浸し。
「くしゅっ」
「だから俺は嫌だと言ったんだっ」
「庇ってやったんだからいーだろ」
「そういう問題じゃあ…とにかく着替えた方がいいな」
「いいよ、ほっときゃ乾くって」
「何言ってんだ、馬鹿」
今度はおれが引っ張られる番だった。引っ張られるというか抱えられるみたいだったけど。



「おらっ、着替えて来い」
手頃なパーカーとミニスカートを買って(選んだのも買ったのも良牙だ)おれは着替えるべくトイレに入った。
そこで鏡に映った自分の姿を見て気付いたんだけど…結構際どい格好をしている。
服はびしょ濡れで身体のラインが露になってて、下手したら透けて見えそう。
だから良牙はあんな抱き抱えるみたいにしてくれたのかな…。
なんてゆーか、ちょっと嬉しい、かもしんない。





「良牙」
「らんま…?」
良牙はまじまじとおれの姿を見た。
「なんだよ。髪ほどいたくれーでおれだってわかんねーのか?」
「違っ、そうじゃなくてその
…なんでもない」
良牙は心持ち赤い顔でそっぽ向いて歩き出した。


「なぁ」
「礼ならいいぜ。貸しってことにしといてやる」
「そーじゃなくて、観覧車乗らねぇ?」
観覧車なんてベタもいいところだと思う。
だけど、そんな気分だったんだーーー。













憧れの奈奈様より小説を頂いてしまいました…!
素敵良ら小説ありがとうございます!(感涙)


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