■愛の果て W■

□我慢できない
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別に、人肌が恋しいとか。
触れられたいなんて思っている訳ではないのだが。
今日はどうしても、渦巻く感情を押さえ込む自信が持てなかった。


テロリストも無事に取り押さえ、平穏な時が軍部に降り立つ。
急務で多忙な故に、あの人との戯れも、情事すらもなく。
いつもは毎日、あの人が求めてくるものだからこんな、制御できるかどうかわからない感情をもつことなんてなかった。


「今日は定時に帰れそうだな、中尉」

嬉しそうに彼が言う。
彼もまた、急務に追われ休憩すらもまともに取れなかったのだ。

「ええ、ずっと忙しい日々が続いていましたから」

「終わったら、私の家に行こう」


疲れている癖に、私を呼ぶ余裕はあるなんて、なんて厭味な人。
私は見るだけでも我慢が限界の寸前で。
こんなの、私らしくない。
私はただ、はいと頷いて今の会話など最初からなかったように仕事場に戻った。

大丈夫、顔は赤くなっていない。
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