■愛の果て U■
□豹変
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「ホークアイ中尉に、酒を呑ませる?」
ロイは、ハボックからの提案にきょとんとしている。エルリック兄弟は、訳が分からないと言った雰囲気を醸し出していた。
「中尉の友人に聞いた話ッスが、中尉の泥酔は半端じゃないらしいッスよ?どんな感じか、見てみたいと思いません?」
ハボックの提案に、ロイとエドワードの耳がピクン、と動いた。
「ふむ……興味がないと言えば、嘘になるな」
「のったぜ!その話」
二人の反応に喜ぶハボックと、呆れているアルフォンス。
「じゃあー、良いッスか?」
ハボックの話をロイとエドワードは真剣な表情で聞いていた。
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「新発売のチョコレート?」
ホークアイは、不思議そうに尋ねる。
「程良い甘さが人気らしい。中尉、ちょっと食してみてくれないか?」
ロイは、ホークアイにチョコレートを差し出す。
だが普通のチョコレートではない。酒入りのウイスキーボンボンだ。
これなら、怪しまれずに済む。
案の定、ホークアイはすんなりとチョコレートを口にした。
ホークアイの様子をじっ……と見つめる。
ギロッ!!!!!
殺気を宿らせた目で、ホークアイはロイを睨みあげる。
「ロイ・マスタング!!!!!!」
「はいっっっっ!?」
鼓膜が破れるくらいの怒鳴り声。
思わずロイは気をつけを反射的にした。
「座りなさーーーーーーいっっっ!!」
ロイは返事するのも忘れて慌てて座った。
…………………土下座で。
「大体、貴方はっ!!」
泥酔リザからの、屈辱的な内容。
酔っぱらっているからか、有り得ないことまで言っていた。
エルリック兄弟とハボックは逃げたい思いで頭がいっぱいだった。
あまりのリザの豹変振りに恐怖を感じ、足が動かないのだ。
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数時間経ってもリザのお説教は続いた。
薄情にも、エルリック兄弟とハボックは何時の間にか逃走していたので、ロイは後で消し炭にしてやる!!と、殺気を宿らせていた。
次第に、リザの声が弱々しくなって来た。「私ばっかりっ……」
「……え……?」
見上げると、リザはぽろぽろと涙を流していた。
「中尉……?」
「私ばっかり嫉妬してるんだもんっ!悔しい……!大好きなのにっ……」
ホークアイがロイの胸を何度も叩く。