flirt
□焦燥感
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私が初めて、彼と出会ったのは、私が彼の故郷へと赴いた時だった。
書類不備のせいで、私は彼が31歳だと思っていたのだが聞いてみれば、なんと11歳の子供。
少々、子供に会うのには気が引けたが、今更戻る理由もないので、このまま進むことにした。
彼の家に到着し、玄関を開けると中に明るさがない。散乱した部屋のそのまた奥の部屋に、想像すらしてなかったありえない散乱があった。腹のそこから込み上げて来る怒りをなんとか押さえ込み、憲兵に問いだ出して彼の居場所へと向かう。
その時の彼の顔は、まるで壊れた人形のようだった。覇気すら感じられない顔に押さえ込められた筈の怒りが、ふつふつと沸き上がる。
許せない禁忌、そして絶望の表情。
だが、この彼の行為で軍の狗を目指す志も新たに生まれるだろうと確信した。
彼と別れた後の月日は、正直言って記憶の中では曖昧だ。
ただ、彼が来ることだけの確信を持って、軍務についていただけだったから。
そして、約一年後。
髪を伸ばし、みつあみでまとめたあの頃の彼が、東方司令部へと赴いていた。
「よう、中佐」
もう、あの絶望の表情ではない。