Spell Cogs

□第七話 知り得ぬ魔力
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「……まぁ、来てしまったものは仕方ないわ。とりあえず次の定期船が来るまでは、この町に滞在しましょう」

短く溜め息を吐いた後、ティエラがそう言った。

改め、ここはターミルと言う小さな町。
北に存在するため、一年中雪で閉ざされている。イベラスタ王国には変わりないのだが、かなりの田舎。その証拠に町の周りにあるのは海と、化粧をした山と森。それに町を挟んで海と反対側に位置する、僅かに開けた平原だけである。

「こんなとこでどうすんだ?ビューラの気配とやらもないんだろ?」

肩から降ろしていた荷物を再度担ぐと、フィエスタはそう言った。
当然の疑問だ。元々この町には用はないし、ハルワ行きの定期船は、調べたところ明日にならないと出ない。おまけにここは、雪に閉ざされた静かな町だ。言いたくはないが、完全に無駄足である。
しかしティエラは既に頭の中に案があったのだろう、一呼吸だけ置いて真っ直ぐに3人の顔を見た。

「平原があるなら丁度いいわ。……魔法の練習、しましょう」

平原に出れば、周囲の人間に危害を加えることもない。攻撃魔法でも難なく練習することが出来るだろう。
いくら魔力が宿っていると言っても、未だお互いの能力を完全に把握した訳ではない。それに実戦で一度は使用したとはいえ、フィエスタは初心者。シウダードに至ってはこうして旅を初めて以来、魔法を使う機会すらなかった。
パーティとして共に旅をするのなら、仲間の能力を知らないという事は致命的だ。だからこその提案だった。

「魔力を上手く操るには、最低限の知識と練習が必要よ。シウダードには会った時、簡単に三大魔法の説明はしたけど……。フィエスタはその辺に関してどこまで知識があるのかしら?」
「三大、魔法……?」

問われ、フィエスタは首を傾げた。
聞いたことのない単語が行き成り、しかも知っていて当然の様に出てきたのだ。無理もない。
しかしその態度にティエラは固まった。この間、リームの森で魔法を使っていたというのに、その知識は皆無に近いではないか。
ティエラは、話の内容が理解出来ていないフィエスタから、その隣で佇んでいる彼の魔法使いへと視線を移す。

「……ノース、もしかして何も説明してないの?」

睨まれて、ノースは罰が悪そうに視線を明後日の方向へ向け、苦笑いする。

「う、うん。だって時間なかったしー……ほら!説明するの苦手だし!」

えへ、と冷や汗つきの愛想笑いを向けられて、ティエラは一つ溜息を吐いた。
それにしても知識もなしに魔法を上手く発動させたとなると、フィエスタには驚いてしまう。

あの芸当はフィエスタの才能のお陰か――それともノースの魔力か。

考えていても仕方がない。
船着場にいつまでも居る訳にもいかず、4人はまず宿を確保するべく町の方へと歩き出した。


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