Spell Cogs

□第一話 門を抜けて
2ページ/13ページ



魔法界。
たったひとつの国が、1人の王が治めている世界。

その中心地、代々この世界を守り続けてきた王族が暮らすネオテス城の城門の前で、どんと仁王立ちで立派な城壁に囲まれた美しい城を見上げる少女が1人。

ワンピースなのに動き易そうなそれを身に纏い、そのおろせば長いであろう赤髪は高い位置で2つに纏められている。城を見上げているエメラルドの瞳は何かを期待する様に輝いていたが、その視線をそっと手元に移した途端、不安の色を宿し始めた。胸の前で抱く様にして持っている複数の書類。どれもこれも大事なもの、ひとつでも無くしたらここに来た意味がなくなってしまう。

「学園の卒業証明書はちゃんと持ったし…身分証明もあるよね」

大切に抱えて来た書類を確認し直すと、「よぉし」と意気込みその歩を城門の兵士の所まで進めていった。夢にまでみた、あの世界に行く為に。

「ん?貴様、何者だ?」
「あのっ!私…ノースって言います!半人前の魔法使いです!修行に行きたくて来ました、王に会わせて下さいっ!」

その言葉を聞いた兵士は、一瞬目を見開いた。暫く必死に王との面会を求める少女――ノースを見ていたが、やがて大きく溜め息をついた。

「貴様…田舎出身か?」
「えぇっ、何で解ったのっ?…うん、ロア村出身だけど…それが?」
「…あのなぁ、今は」

「まぁ、その話は王からお話になるそうですよ?お嬢さん、こちらへどうぞ」

突然奥から声が聞こえて、ノースと門番の兵士は同時に振り返った。
そこにいたのは普通の兵士よりもちょっと偉いだろう兵士――詳しくは解らないが、少なくともノースにはそうにしか見えなかった――で、ノースの姿を目にとめると中へ入るように言った。本当に偉い人なのか、門番の兵士は何も言わずにノースが自分の横を通り過ぎるのを見ているだけだった。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ