Spell Cogs

□第二話 港街
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港町リーム。
この大陸の中でも比較的大きい港町で、他の大陸からこのウェール大陸に入る者やイグダスの樹海を挟んで反対側にあるウェストンと言う名の城下町を訪れる者、そして街の中で開かれる市場に出品される品など様々なものの玄関口となっている。
その賑やかな雰囲気と、時折頬を撫でる潮風が運んでくる海の匂いにノースの心は弾む。

「すっごい大きい街だね!」
「…まぁな。俺はあんま感じねぇけど」
「いいなぁフィエスタは。こんな凄い街に住んでるんだー!」

歩きながらもノースは、パートナーが生まれ育ったと言う街をきょろきょろと見回す。

この街はフィエスタの故郷の街でもあった。生まれた時からこの地を離れたことのなかったフィエスタはこの街に詳しく、人間界のことも交えていろんなことを教えてもらうことができた。

「ね!暫くこの街にも帰ってなかったんでしょ?友達とか家族とか会って行かなくていいの?」
「あぁ、会えない」
「会えない?」

約束、というか勝負の最中なのだとフィエスタは言う。
お互い強くなれたと思えたら、この街に帰って来ようと。半ば強制で交わされた約束だが、今家族に会えば自分が帰って来ていることがバレてしまう。そう語るフィエスタは実に微妙な表情だった為、ノースは負けたくないの?と問う。

「…あいつにだけは、負けたくない。だけど、お前の武器を探すのが先だ」

行くぞ、と言い会話を切るとフィエスタは迷うことなく慣れた街を進んでいく。その後をノースも小走りでかけて行った。



「うっわぁ…!」

店に一歩足を踏み入れたところで、ノースは感嘆の声をあげた。
立てかけてある槍も、壁に掛けられている斧や剣も、台の上に並べられた短刀や弓矢もノースの目には珍しいものとして映り、思わず手が伸びた。

「危ないからあんまり触るな。…こっちだ」

フィエスタは他の武器に興味を示すことなく、店の隅にノースを呼ぶ。そこに行くと刃のない、所謂打撃系の武器がならんでいた。その中にある武器の一つ。何かの革で出来ているのであろうそれは、ピンと伸ばせばノースの身長くらいはありそうだ。先端には綺麗な石がついていて、ノースの心を揺さぶる。フィエスタはそれを手に取り、手持ちの部分と適当な位置を握りピンと張る。

「これが俺が言ってた鞭だ。扱えそうか?」
「うん!これリボンと似たような形だし、これだったらきっと大丈夫だよ!」

ノースは鞭を手に取ってまじまじとそれを見つめる。これがノースの言うリボンであるということと、先端の綺麗な石と二重に興味をそそられたのだ。
持ちやすい、軽い、扱いやすいと言えば、ノースの得物はそれで決まりになった。新しく自分のものになったそれを腰の辺りに固定し、ノースは満足気に微笑んだ。


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