Spell Cogs

□第五話人間界の王
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ホールドマイン王国。
この世界で栄えている国の一つで、地図を広げた時に一番東に位置する大陸をすべて占めている王国だ。その領土の殆どをイグダスの樹海が占めているため街は決して多いとは言えないが、人口は他の国に引けを取らない。この首都ウェストン、それにリームといった都市部の人口が多いからだ。そしてウェストン53世、彼の力が働いて外交もスムーズに成されている、社交的な王国。

「よっし!荷物、纏めに行くか」

シウダードの言葉に全員が頷いた。風も心地いいしまだ外に居たいというのが本音だが、到着してすぐに下船したいとなると今から荷物を纏め出さないと間に合わない。しぶしぶ部屋に戻ることにした。
準備するのは何も下船の準備だけではない。これからの冒険に必要な物資、その買い物の準備と、王に会うことへの心構えも。





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「凄い!広い!賑やかー!」

心構えも――出来ていない魔法使いが一人。
緊張というものを知らないのか、ノースは船が港に到着するや否や、自分の荷物を担いだまま甲板を走り抜け、下船に並ぶ人々を押しのけて我一番で陸に足をつけた。

「うっわー…!」

リームでもノースはその広さと賑やかさに感動していたが、この街――ウェストンは城下町だ。リームの何倍も広いし、活気溢れている。強引に下船した上、辺りをぐるりと見渡しては、大声で感動を言葉に出すものだから周りから些か白い目で見られる始末である。そんなこと、本人は気付いてもいないが。

「…ノース、頼むから騒ぐのやめろ。恥かしい」

後ろからゆっくりと歩いてきて、フィエスタは溜息混じりにそう言った。それから、列は乱すなちゃんと並べ、と云う注意も付け加える。前例があるから多少の覚悟はしていたが、まさかここまでぶっ飛んだ行動をするとは思わなかったのだろう、彼の顔は僅かに赤面している。
パートナーのフィエスタでさえこの状況。ティエラは彼よりもまだ少し離れたところで盛大に頭を抱えている。その隣に居るシウダードは随分楽しそうに笑っているが、その目はどこか懐かしいような色を称えている。大方、彼にも前例があるのだろう。

「あ…ごめん、ごめんね?」
「いや…解かったんなら、もういいんだけどな」

これからは自重してくれ、そう言うフィエスタの肩をがしっと掴み先ほどまで笑っていたシウダードがひょっこり顔を出す。


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