Spell Cogs

□リーム
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「…とりあえず街に戻ってきたし、早く宿をとって今日は休みましょう」
「そうだなぁ…もう夜だから船の手配も明日にするか!」

「早く汗を流して休みたい」と顔に書いてあるんじゃないかと思うくらい心の内をそのまま言葉にしたティエラに、シウダードも同調した。やっと休める。やたらと弾んだノースの言葉にフィエスタの肩に力が入る。それを不審に思い3人が振り返ると、フィエスタはその重い口を開き、呟いた。

「駄目だ…宿はとれない」
「……え」

充分すぎる沈黙の後、シウダードが漸くそう言った。それが引き金となり、少女2人も我に返り、激しく問い詰める。

「な、なんでぇ?」
「なんでって…手持ちが一銭も無いんだよ、ウェストンで買い物してそれっきりだ」
「…ねぇ、銀行あるでしょう?そこから…」
「あるにはあるけど時間が遅すぎだ、とっくに閉まってる」
「なんとかならない?ねぇ?」

返答に必死なフィエスタに何も言わず、シウダードはとりあえず辺りを見回してみる。宿屋が建ち並ぶ港に一番近い通りを一通り見回し、あることに気付いたシウダードは留めの一言を言い放つ。

「今日、月一で船がいっぱい到着する日だ。空きがある宿屋、見たとこないぞー」

その一言は魔法使いたちを黙らせ、再びその場を沈黙させた。ノースはへなへなと地面に座り込み、ティエラは体勢さえ崩さなかったものの、その表情は絶望以外の何ものでもない。しかもそれは、フィエスタとて例外ではなかった。
ただ一人、能天気にどうしようかー、と考えていたシウダードは、やがてぱっと顔をあげフィエスタに声をかける。

「よっしフィエスタ!行くか?」
「どこへ?……」

意味の解からないシウダードの発言に、フィエスタは理解し難いという顔をしていたが、暫くするとその目を思い切り見開き、しかしそれだけで静止してしまう。主語のない会話で言いたいことが解かってしまうなんて流石幼馴染、と、ティエラは内心感心していたがあえて口には出さずにいた。
シウダードは固まってしまったフィエスタに構わず続ける。

「まぁ唐突過ぎるけど場合が場合だし。3人ってちょい難しいかも。だからー…」
「……」

見開いていた目をなんとか戻し、フィエスタはシウダードの言葉に追い詰められて漸く納得――というよりは観念したように言う。

「…明日、どうすればいいんだよ?」
「んー…12時にここっ!」

船の手配は俺に任せてよ、なんとかしとく、というシウダードにフィエスタが頷いた後、幼馴染2人は同時に魔法使いたちに視線を移す。

「…行くぞ、ノース」
「ティエラー!フォロミー!」

「えっ?う、うん」
「その言い方勘に触るわ。…何処に行くの?」

その質問の答えを得ることの無いまま、先を歩くパートナーの後を気力だけで追いかけて行った。



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