Spell Cogs

□第九話 古城探索
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「っ!?」

自分の隣には、ノースが居た。
フィエスタの頭の直ぐ横に両腕を乗せ、それを枕代わりに寝息を立てている。居た堪れなくなって慌てて上半身を起こすと、布が擦れる音がした。
見ると自分の膝の上には、ノースのケープ。恐らく、冷えないようにと肩あたりに被せられていたのだろう。持ち主が貸してくれていたのだと、直に確信した。起き上がって初めて分かったが、ノースは床にべたりと座り込んで眠っている。
こんな体制じゃ、疲れなんて取れないだろうに。だがもう部屋の中は明るくなっていて、今起こしてまた寝直し、というわけにもいかなそうだ。フィエスタはケープを広げると、眠るノースの肩にそっとかけてやった。
身動き一つせずに寝息をたてるノースを見ていると、向かいのソファから声が聞こえてきた。

「おはよー。もういいのか?」
「シウダード……」

声の主は、シウダード。
テーブルを挟んで向かい側にある、一人掛けのソファに剣を持ったまま座っているということは、見張りをしているのだろう。
朝から、それも寝ていないだろうに、にっこりと笑いかけてくる幼馴染にフィエスタの心に罪悪感が募る。

「悪い、見張りずっとお前だったのか?」
「いや、ティエラとヤキも手伝ってくれた」

シウダードは隣のソファを見るようにと、視線で促す。
その後を追うように見ると、シウダードの隣のソファにはティエラが座っていた。
背もたれに目一杯凭れかかり、寝息をたてているティエラと、その隣で彼女に寄り添うようにして眠るヤキ。ソファは一人掛けのはずなのに、十分2人で休めているのを見て笑いそうになる。2人共小さいから一人掛けで十分だな、という言葉を飲み込み、フィエスタはシウダードの方を見た。

「ヤキの奴、随分ティエラに懐いてるじゃないか」
「俺が寝てる間に話し声が聞こえてたから、喋ってる間に仲良くなったのかもねー」

ははは、と笑い声を洩らしながらそう言うシウダードは、久々に見る兄の顔をしていて、何となく嬉しく思う。
どうであれ、彼だけが徹夜で見張りをした訳ではないことに、素直にほっと息を吐いた。

「んー……っ」

ふと、意味を成さない声が響いて、2人は声の主へと視線を移す。
まだ眠そうに目を擦りながらゆっくりと体を起こす少年に、始めに声を掛けたのはシウダードだった。

「おはよーヤキ!眠いだろ?まだ寝てていいぞ?」
「ううん、大丈夫……。それよりフィエスタ、体はどう?」
「え?ああ、もう何ともない」

その答えを聞くと、ヤキも安心したように微笑んでソファから降りた。
深く腰掛けていると届いていなかった両足を、しっかりと地面につけてから、フィエスタの傍まで歩み寄り、様子を窺う。今の彼に異常がないことが解ると、ヤキはほっと溜息を吐いた。


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