ワイルド・ラッシュ
□3、喧嘩は花だ
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全く。人が回転ズシってやつを楽しみにしてたらまた物騒な事件が起きやがった。
此処に来た時もカツアゲがあったな。‘ニホン’て治安がいいとかヒナは言ってなかったっけ。
などと考えつつ、被害に遭った店員を見下ろす。偶然にもそいつはコウの顔馴染みらしい。
まだ若い顔だが、気骨のありそうな良い顔つきをしてるのに、今は目に痣や口が切れて痛々しい姿になっている。
ヒデェ事しやがるな。
揉め事を無視するのは簡単だ。この世界の警邏隊(けいらたい)に任せりゃいいんだ。けど、既に数件続いてんなら、未だに後手後手に回ってるって事だろう。
それなら甲か不幸かタカ……と言ったけかを殴って着いただろう血の匂いがこっから離れてんのが俺には分かった。それに向こうは風上、こっちは風下。途切れずにいい塩梅で追える状態だ。
さて、それならどうしようか。
「……多分わかるぜ、俺」
「何が」
店の連中に引き取られるタカの背中を見送り、コウは怪訝そうに顔を顰める。おかしな話をしてるのは自分でも分かってた。でも、多分きっと仲間をやられて怒ってるこいつなら乗ってくるだろうと確信していた。
「そいつらの居場所。そう遠くない」
俺が常識を逸してるのは知ってる。が、コウはそれ以上の度量があり、何も聞かずに表情(カオ)で答えた。
問うまでもないが、形式的に聞く。
「どうする、組長サン」
コウは無言で頷くと、俺の元に寄り、拳で肩を叩く。
「案内よろしく」
「りょーかい」
示し合わせたようにニヤリと笑う俺達。まるでこれから遊びにでも行くように、今度は二人の拳を合わせた。