天使ですよ


□05「無視かよ」
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 * * *


「今日の夕飯はオムライス〜♪」


 鼻歌混じりに、今にも軽やかにスキップまでしてくれそうなタローが、あたしの右手に引っ提げる買い物袋を嬉しそうに眺める。

 父さんが仕事で夕飯を食べない時は、タローは図々しくも必ずご相伴に預かる。
 しかも、何が悲しくて夕飯をタローリクエストのオムライスにしているんだろう。


「食後にババロアついてるぜ」


 そうだ。頼まれるがままデザートまで買ったんだった。
 作詞作曲タロー自信の台詞付き奇妙な歌。
 一体こいつの精神年齢はどうなっているのだろうかと、今日は口が長く邪魔ったらしいワニの着ぐるみを被ったタローを一瞥し、あたしは肩を落とす。

 タローは天使だから、あたし以外の人間には見えない。(ご飯は食べるくせに)
 タローは天使だから、人目のある所であたしの買い物も手伝えない。(ご飯は食べるくせに)
 タローがもう少し役立つなら、お一人様一パックの卵が二つ買えたのに……。そう思うとタローの存在意義に無意味さを感じてしまう。


「……せっかくの天使なんだから、もっとこき使えたらいいのに……」


「春ちゃん!? 天使は奴隷じゃないッスよ!?」


 ビクンと竦み上がるタロー肩を、情けない目で見つめあたしは肩を落とす。

 全く使えない天使。
 だけどあたしはその天使に付き纏われるのにも少し慣れてしまっていた。


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