天使ですよ


□07「油断したな」
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 いつか見た夢の少女、ビエラはとてもそんな悪女とは違う可憐な様相だった。結局は前世と何かが混同しただけの夢なのだ。


「マジ、意味分かんない」


 犬に一泡吹かせたく始めた前世調査。インターネット、図書館。心当たりを見て回るも、マイナーな歴史。そうそう文献、資料は見つからない。

 流石に疲れたと、あたしは図書室の長机の隅で目頭を抑えて顔を伏せた。

 放課後の静かな図書室。あたしは誰も読んでいないような分厚い中世の文献を開き、タローはその向かいで漫画を読んでいた。


「ちょっと、あんた手伝う気ない訳?」


「あるけど、どの資料見たらいいか分からないし、これ、面白いし」


 そう言って誰にも見えないのをいい事に、タローはグスグスと鼻を啜っている。まあ裸足のゲンは名作だから気持は分からなくもない。

 だが、頭部に輝く皿が眩しい河童の着ぐるみ。見た目の不真面目さと、あまりに職務放棄なその態度に、あの皿を叩き割りたい衝動に駆られても仕方ない事だと思う。

 よくも生命の危機に面しているあたしをよそに笑えるものだ。

 天使のくせに。

 そうだ、天使のくせに。
 調査も早々に行詰まり、苛々の募ったあたしはその鬱憤を果たすように手元のペンケースを投げ付けようと右手に掲げた。時だ。


「桂木?」


 背後から投げ掛けられる声にあたしはピタと動きを止める。


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