天使ですよ
□07「油断したな」
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アリトレール・バル・ディ・フォンデン公爵。
前世のあたしと言われる女王の愛人で、その奇行の片棒を担いで共に甘い汁を啜った男。だが、愛憎のもつれからか、結局はあたしに殺されつまらない最期を遂げたらしい。それが紐解いた文献から分かった事だ。
ただ、その名を見るまであたしは思い出せなかった。
あたしは確かにコイツと話す夢を見たのだ。
あたしはビエラという少女で、コイツはまだ一介の貴族。
それは何の暗示だったのだろう。あたしはこの男に恋をしていた。正確には夢の中のあたしが。
ただ、気になるのは夢の中でのあたしの役割。
ビエラ。
それがあたしの夢の中の呼び名。
だけど――あたしは広げた本のページを睨んで呟く。
「"オリヴィア・ビクトリア"――全然違う名前……」
タローの言い分を信じればあたしの前世はこの人だ。
美貌を持って国王に嫁ぎ、私欲の為に民を殺した稀代の悪女。
つまり夢は所詮夢という事か。