恋愛小説集
□先輩ちゃんと後輩くん♂
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「先輩」
濃紺の袴を引き摺り、俺は彼女へと一歩近付く。
「何です、伊藤くん」
彼女は俺には目も向けず、弓を絞りずっと先の的を睨む。
「好きッス」
届いているのか。
届いていないのか。
彼女は動揺を見せる事なく、更に弓を引き絞る。
「そうですか」
弓が指から離れる。
突き刺さった矢は的の中心を少しだけ逸れたが、それが告白の動揺の表れかと問えば、微妙だ。
「お付き合い願えませんか?」
少しの間。
彼女の表情は俺からは窺えなかったが、思案でもしたのかようやく弓を下ろした彼女が答える。
「……いいですよ」
こうして俺と先輩。
晴れてカレカノ……?
『先輩ちゃんと後輩くん』