恋愛小説集
□愛に狂気
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貴方は私の頬をなぞり、うっとりするくらいの甘い声で囁くの。
‘その琥珀のような蜜色の瞳が愛しい’
そして、瞼を舐めて妖しく微笑う。
‘ホント、掬って飲み込んでしまいたいぐらい――……’
貴方の愛は歪んでる。
でも、私の愛も歪んでる。
聞いてちょうだいね、私――……
『愛に狂気』
それは貴方の瞳と同じくらい細い月の晩だった。
私達は毎夜のような逢瀬を交わした後、肌を重ねて語り合う。
「今日、ハナちゃんと話してた男……誰?」
「ああ、鈴木君? 帰りにコンビニで偶然会っただけのクラスメイトだよ」
「殴ってもいい?」
「ダァメ」
私はクスクス笑い、今にも拳を握りそうな貴方の腕をつねる。
貴方はそう。極度のヤキモチ妬き。
言い方は可愛いかも知れないが、その愛情表現は恐ろしい程激しく、刃物のように尖っている。
それこそ私に近付く男は皆その牙で喉笛を噛み切ってしまうんじゃないかと思うくらい。
私はそんな貴方に捕まった。
貴方の何処を愛しているか分からない。
けど、私は貴方の虜なのだ。