ゆめ6

□あのあんこは甘すぎるから
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「ヤリマンなんか面白い話して」

「そのあだ名やめない?」


またベルとオフが重なった。重なるだけならまだしも何でまた2人で談話室で向かい合ってるのか、仲悪いと思ってたけど実は気が合うのか?いやいやいや、ない。


「面白い話なんかないからー」

「いーから話せよ、王子ヒマ」

「えー…」


面白い話ねー。あるにはあるけどどれもこれも内輪ネタだからベルに話して面白いと思うかな。あれじゃないこれじゃないとうんうん考えていると、痺れを切らしたベルがお題を提示してきた。


「最近ヤったやつで印象的な男」

「…ああ、そーゆー感じで」

「寧ろお前それ以外にあんの?」


失礼だなあるよ。まあでもそういうならそれ系でチョイスしてあげようじゃないか。ちょうど今すごい誰かに話したいけど機会がなかったビックニュースがある。


「あたし先週ジャッポーネに任務いったんだけど」

「へー」

「そんときに、ベル雲雀恭弥わかる?雲のコ」

「ああエース君だろ?…は?まさか」

「あのコとヤった」


途端にベルが爆笑した。やっぱこれウケるところかな?


「ありえねー、ババア犯罪じゃん」

「はあ!?あっちが中学生ってこと置いといてもあたし20歳だし!そんな離れてないし!」

「やべー超ウケる、てかお前節操無さすぎだろ」

「いやー成り行きって怖いよね」










任務が超楽勝で終わった。これあたしじゃなくてももっと下っぱに任せといてもよかったんじゃない?そう思うほどにものの数秒でターゲットを葬ったのだが、 早く終わらせても帰れるわけじゃない。何故なら此処は異国ジャッポーネ、帰りの便と渡された飛行機のチケットは今日の夜中の最終便だった。てゆーか何で一般便なのあたし幹部なんだし1機チャーターして。今更不満を言っても仕方ないのだが、真っ昼間から暇になってしまった。さて、どうしようかな。現場は死体処理班に任せてあるため早々に後にし、現在公園のベンチで140円のキャラメルミルクコーヒーを手にもてあましている。単独任務だから部下も連れてきてない、お腹も空いてない、じゃあ誰かに付き合ってもらおうか、と考えたところで思い付いた。跳ね馬いないかな。確か最近この辺によくいるって聞いた。パッと気分も明るくなり、残った分を一気に飲み干し缶をゴミ箱へ放り投げた。美味しいけどちょっと甘過ぎた。最後の方飽きる。公園を出て、先日のリング戦の記憶を頼りに歩き出す。学校、こっちの方だったと思うんどけどなー。あの時はホテルから学校までスクアーロとキャッキャしてるだけで道見てなかっ…あっ、それ前半だけだった。スクアーロもルッスも離脱しちゃってからは話す人もいなくて1人で歩いてたから、大丈夫なはず。あの日すっごく悲しくて、ずーっと泣いてて、でも心配してくれる人いないからただただ泣き続けてて。あー、レヴィがなんか「元気出せ」とか言ってチョコレートくれたような気がするけど無視した記憶がある。悪いことしちゃったなー、万一きゅんときてたらレヴィとあれやこれや…いやねーわ。


「あっ此処だ此処だ、並盛中学」


散々暴れた校舎は綺麗に戻っており、チェルベッロ機関の謎が益々深まった。まあ1番知りたいのはあのスタイルキープ術なんだけど。みんなガリガリすぎでしょ。


「おうせつしつ、っと」


無駄にヴァリアークオリティーを駆使して誰にも見付からないように辿り着いた。騒ぎになると色々めんどーだからね。綱吉とかうるせーんだわ、おもしろいけど。


「ディーノッ」


扉を開けるとあたしの顔を見て驚いたディーノと、不機嫌そうに眉を潜めた男の子がいた。いやん、ディーノ相変わらずかっこよ。思わず見つめる視線が熱くなってしまう。


「どうした?何でこんなところに…」

「任務で日本来たんだけど早く終わりすぎちゃって、時間空いたからディーノいるかなって思って来ちゃった」

「マジかよ?相変わらず自由だな」


敵襲かなんかで来たわけじゃないことがわかって警戒を解いてくれたのか、久しぶり、と笑いかけられてきゅんとした。はあ、素敵。優しくてかっこよくて優雅で頼りになる。見てるだけで癒される男っていうのもなかなかいないよね。ぶっちゃけモーションかけたことも何回もあるけど、いっつも交わされる。まあ予想つくんだけどね、スクアーロになんか言われてるって。あたしがハート飛ばしてるのわかってあらかじめ阻止に動いてる。それはそれでスクアーロが愛しいから気にしてない。ディーノも面倒そうな色恋沙汰には巻き込まれたくないんだろう、毎回うまーく逃げる。あたしも逆の立場ならそうする、わざわざ首突っ込んだりしない。わかってて絡むあたしも大概最低よね。でもかっこいーなあ、あわよくば精神出ちゃってほんとごめんね。


「ね、夜までひまなの。遊ばない?」

「あー、わりい!俺これから会合あるんだ。…嘘じゃねぇって、変な顔すんなよ!近くまで寄ったから恭弥の顔見に来ただけなんだって、つーかよく此処覚えてたな」

「うんなんとなく。雲のコの修行見てるって覚えてた」

「ていうか、部外者は立ち入り禁止なんだけど」

「え、怒ってる?」

「恭弥、こいつこんなんでも強いぜ。どーせなら手合わせしてもらえば?」


ぶすっとしたまま睨み付けてくるヒバリに仲良くしよーよ、と笑いかけると目を逸らされてしまった。つれないなー。ていうかディーノ今日もうまい、あたしの流し方が。


「ボスーそろそろ行くぜー」

「悪い、行かねえと。久しぶりなのにごめんな、お前もあんまりフラフラしてないでスクアーロのこと真面目に考えてやれよ」


あ、フラれた。ちょっとだけショック。ディーノはやっぱスクアーロ推しなんだー。ドアが閉まったと同時にねえ、とヒバリが声を発した。


「勝手に入ってきていつまでいるつもり?」

「ひまだから。ディーノ帰っちゃったけど、ヒバリ遊ぼーよ」

「は?馬鹿じゃない、いいから出てって」


言い終わらぬうちにソファに座るヒバリの上に向い合わせで乗った。予想外だったのか動きが一瞬止まったヒバリの頬に手を滑らす。遊ぶって不健全な意味でごめんね青少年。たまにはこういうのもいーかも。


「ちょっと、何」

「あとでバトってあげるから。好きなんでしょ?あたしこう見えてもヴァリアー幹部」

「…それとこれと、何が」

「これくらいビビんないで、もしかして初めて?」


より一層眼光が強くなった。やっぱ童貞には挑発に限るね。すーぐムキになっちゃってかわいー。


「くだらない、あなたとする意味がない」

「意味なんていらなくない?楽しければいーじゃん」


欲望に忠実なヒバリが意味なんて今更口にするなんてらしくないよ?と煽ってやればもうあとはあたしの手のひらの上。手首を捕まれ頬の手を引き剥がされる。むすっとしたまま近距離で視線を合わせて、ヒバリがひとつ息を吐いた。


「あとでしっかり咬み殺す」


そして乱暴なキスをした。










「ゆーて突然の喪失で可哀想だからリードしてあげた。そして考えてみたらあたし童貞喰い初めてだったかも知れない」

「やべーマジヒバリかわいそー、黒歴史」

「いや最終的には気持ちよくなったからよくない?」

「お前だけだろヤリマン、つか跳ね馬にもちょっかいかけてるとか尻軽すぎ」

「ディーノねー、昔から格好いいと思っててその名残で…本気じゃないからセーフ」


本気で手に入れたい男とめちゃくちゃタイプのイケメンは少し違う。まあ本気で手に入れたいと思ったこと数年ないんだけど。向こうから来る中で選んでるだけで。


「で?そのあとヒバリなんだって?」

「そのあと?約束だよとか言ってバトルになった。でも明らかに照れ隠し。全然動きに精彩欠いててヒバリらしくないから適当に攻撃交わしてバイバーイって帰ってきちゃった」

「ヤり逃げじゃん」

「お腹すいたからさ。フレンチトースト食べたくて1人で原宿並んだ」

「お前マジでウケる、何やってんだよ」

「美味しかったよ、まあ確かに寂しかったけど」


そのあと適当にアクセサリー見たりして時間潰して早めに空港いって搭乗口前でちょっと寝て帰ってきた。ただの観光客じゃん。


「てゆーかヒバリからメールくんだよね。いつ日本来るのとか次は咬み殺すとか」

「メルアド交換してんのかよ、つか完全ヒバリマジじゃん」


ですよねー。かわいーね童貞ちゃんて。ワンナイトでしつこく連絡してくる男と違ってなかなか撥ね付けられない。メール1、2回しか返してあげてないけど。そうかあ、本気になっちゃうんだあ、ヒバリも意外と純情なとこあるんだね。きゅんとくるけどまあ、現実イタリアと日本だし?向こう中学生だし?まだマフィアと言えど可愛いもんだし?罪悪感湧いちゃって本気で相手にしてあげられない。もっとイイコ見付けなさい青少年。若いうちからこんな女に引っ掛かってると不幸になる。人を愛せなくなる。セックスが愛を確かめあう行為じゃなくて、寂しさをまぎらわす手段になる。それってとっても悲しいことだよ。


「反省。気分で手を出した罪は重い」


遊びっていうのは双方の気持ちが綿飴のように軽くなきゃいけない。予想出来なかったとはいえあたしにそんな真っ直ぐ向いてくれるヒバリには悪いことをした。もう年下に手出すのやめとこうかな。年上なら生意気で冷たくも出来るけど、なんかやりにくい。好みかな。でも多分またヒバリと直接向かい合ったら誘惑したりされたりでヤっちゃうかもだけど。やっぱ欲望には抗えないよね。



あのあんこは甘すぎるから




title:両手

(151031)

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