小説【咎狗】

□君に送る言葉
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ザァーーッーーー

あれ、俺なんでここにいるんだろ?
雨がうるさくて何にも聞こえない。

なんでこんなにずぶ濡れになっているんだ。


「…っ!!…!スケ!」


誰、俺を呼ぶのは?
いいよほっといて…
なんだか分からないけど凄く眠いんだ。

「ケイスケ!!」
必死な声が雨とともに降り注ぐ



あぁ、そうか君だったのか

俺を呼ぶのは


初めて聞く君の悲痛な声に少しだけ優越感が湧いた。


そして、それとともに悟った。

もう君のそばにはいられないことに。

俺にとって何よりも大切な君。
ずっと君を見続けてきた。
けど、これから先に一緒に歩めないのだと気づいたら…









恐くなった。









君はきっとこれから俺を置いて進むのだろう。

怒ったり、呆れたり、時には泣いたり、笑ったりして。

君の全てを見ていたいのに、俺はそれを隣で見ることができないのだと思うと、背中の傷よりよっぽど



痛かった




だから、大好きな君に俺は最後に罪を犯すよ。

君は優しいからきっと一生苦しむことになると分かってる。

…だけど忘れて欲しくないから。

俺がいたことを、俺が君を想っていたことを。

だから俺は最後にこの言葉を送る。


「…よ…アキラ」


震える君の唇に己の唇を重ねる。
君の中に少しでも俺という存在が残ってくれるようにと願いを込めて。


「ア…ッ…スケッ…」
口付けしたままケイスケは動かない。
嫌な予感がした。

「ハ…ァ…ッケイスケ!!」
重なるケイスケを引き離し名を呼んだ。
けれど、目は閉じられたまま開かない。

抱いている体は冷たい


どうして?
どうしてそんな言葉を残して、俺を置いて
居なくなる?


「馬鹿やろう…」












ー『大好きだよ、アキラ』ー









それは純粋な想い。それは歪んだ想い。
この思いがずっと君を縛ってくれますように。

ー完ー
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