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□哀しい程近いこの距離
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無機質で単調な機会音は、あたしの不安を煽る。
それを聞いていると、もしバトル中だったらどうしよう、とかそんな事ばっかり考えてしまうのだ。
けれど、コールが途切れて彼の顔が映ると、途端にそんな不安は吹っ飛んでしまう。
『……どうしたの?』
半ば呆れ気味にそう言うチェレンは、あたしがたいした用事もなくライブキャスターを繋いでいる事を知っている。
そりゃあ、結構頻繁にこうして連絡をしているのだ。
少し前の様に一々心配なんかしないだろう。
「ちょっと、顔見たくなって」
『まぁ、どうせそうだろうと思ったよ』
最近の君、そればっかりだもんね。
そう言って笑うチェレンに少しだけ怒りたくなる。
それじゃあ、あたしが寂しがりやみたいじゃない。
寂しいだけなら、チェレンじゃなくて、トウコにでも連絡している。
「あたしは、チェレンが好きだから、チェレンに電話してるの」
「……あ、そう」
勢い余ってそう言えば、チェレンは驚いた様に、そう呟いた。
ライブキャスターが顔が見える様なものでよかった。
もしも顔が見えていなかったら、スルーされたように感じてヘコんでいただろう。
そんな安心感を抱きつつ、再び画面に目をやると、チェレンは真っ赤になっていた。
これには、流石のあたしも驚く。
だって、こんな顔。
(……可愛すぎじゃない……‼)
チェレンがこういう事言われるのに不慣れなのには気が付いていたけれど。
まさかこんな反応されるとも思っていなかったあたしは、不覚にも気が動転してしまう。
もともと好きだったのに、これじゃあもっと好きになっちゃう。
『……ベル?』
「あ、あぁ、ごめんなさい。ちょっと」
チェレンに名前を呼ばれて我に返った。
チェレンは、さっきの言葉を追及しては来ないようだった。
それに安心感するのが半分、ちょっと、残念なのが半分。
今の関係を崩すのが怖い、そう思う半面、この境界を踏み越えてしまいたい自分が居るのも確かで。
弱虫なあたしは、結局、安全な方を選ぶのだ。
幼なじみであれば、あたしの求めているのとは違うものの、チェレンの特別でいられるから。
「チェレン、あのさ、」
『なに?』
「……明日も、こうして、連絡してもいい?」
そう尋ねると、チェレンはクスクスと笑った。
『君らしく、ないね。ダメって言ったって連絡寄越してくる癖に』
チェレンの言葉は全くもってその通りで。
けれどもあたしは、そんな事ないよおと膨れてみせる。
チェレンのその言葉が、快諾の意を含んでいる事に、どうしようもなく嬉しくなっているのも、その表情に隠した。
毎日でも連絡したいと思うのは、やっぱり諦め切れてはいないから。
少しでも距離を縮めたい、そんな事を考えて。
けれど、一歩下がってようく見れば、幼なじみとしてのあたしたちの間に詰める程の距離が空いてはいないと、薄々だけど気づいてた。
タイトルはルネの青に溺れる鳥様より
2011*03*31