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□大事な妹
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「…私はね、多分、沙都子のお陰で楽しくいられたんだと思うんです」
私の凍てついた心を溶かしてくれたのは悟史くんで。
そんな彼を失って、………もちろん、悲しかった。
だけど、沙都子がいたから、沙都子と一緒に悟史くんの帰りを待っていたから、悲しみが紛れた。
もちろんそれはお姉たちのお陰でもあるけれど。
風が吹く。
それは、ついこないだまでの暖かい風じゃなくて、秋の香りを含んだ冷たい風。
沙都子が不意に立ち止まる。
「……沙都子?」
そして、
「……詩音さんは、どうして私に優しくしてくださいますの?」
急にそんなことを聞いてきた。
「沙都子は……私の妹も同然ですから」
「……にーにーの妹だから、にーにーにそう頼まれたから、私に優しくしてくださいますの?」
「、」
私は思わず言葉につまる。
だって最初は、悟史くんに頼まれたからって、嫌々面倒を見ていたのも事実だから。
……でも、今は違う。
カボチャをひたすら嫌がったり、
一緒にトラップを仕掛けたりしたり、
たまーに甘えてきたり。
そんな色んな表情を見て、経験をして。
今ではかけがえのない妹だと、本気で思ってる。
「私が、沙都子のこと、大好きだからです」
「……え?」
「悟史くんから頼まれたのがきっかけではありましたけど。今は自分の意思で、沙都子の近くにいたいって思ってます」
「……私のせいで、にーにーはいなくなったのに?」
「………、」
……もしかして、沙都子はまだ悟史くんがいなくなったのが自分のせいだと思っているのだろうか。
確かにそう思っていた時期もあったけれど、それは絶対に沙都子のせいじゃないし。
……それ以前に、悟史くんはいなくなってなどいなくて、監督のところで眠っている。
まぁ、沙都子はそれを知らないから、まだ悟史くんがいないと思っているのだが。