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□大好き、だから
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「ごめん、迷惑だよな」

「………っ」

首をぶんぶんと横に振る。

僕も風丸さんのこと好きなんです、言いたい、のに、声がでなくて。

それなのに風丸さんが、ごめん、って辛そうに何度も言うから。

なんだかこっちまで辛い気持ちになってしまう。

「、……違っ、う」

ほんの少しだけ嗚咽が収まったので、口を開く。

まだ、声が裏返ってしまうけれど。

「……僕、も。好き、っ、ですから、」

だから、そんな辛そうな顔、しないで下さい。

そう続けようとしたけど、声が出なかった。

風丸さんが、涙を流していたから。

「ごめん、」

「だから何で、謝るんですか」

「……ありがとう」

「……っ」

せっかく止まりかけた涙が溢れてくる。

風丸さんもずっと泣いてて。

ふとここ学校だと思い出したけれど、それでも涙が止まることはなかった。

それから何分ぐらいたったのだろう。

すごく長かったのかもしれないし、はたまた、三分程度かもしれない。

とにかく、やっと落ち着いて二人の涙が止まった。

何かの拍子にまたすぐ泣いてしまうんじゃないかって程涙腺ゆるゆるだったけれど。

「……先輩、」

「……うん」

「……好き、です」

「……俺も、だよ」

風丸さんは、笑った。

つられて僕も笑う。

「風丸さんは、笑った顔の方がいいです」

「宮坂も、な」

目が合う。

風丸さんの目は真っ赤で、彼の瞳に移った僕の目も真っ赤だった。

いつの間にか校舎の中には人が全然いなくなってて、もしかしたらすごい長い間泣いてたんじゃないかな、って思った。

「……先輩、」

「ん?」

「僕、先輩と同じ高校行きます」

そう言うと先輩は、静かに首を横に振った。

「なん、で」

「俺のせいで宮坂の将来を狭めたくない、」

「そんなの、だって先輩は陸上が強い学校に入るんでしょう?ならどっちにしろ僕の志望校になったはずです…!!」
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