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□目覚めた君と,これから
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「……う…っ」

昭和58年7月。

北条悟史は一年にも及ぶ長い眠りから目覚めた。



ここは,どこか



何故,ここにいるのか



頭がボーッとしてよくわからない。



悟史は起き上がろうと体を動かした。

…手首・足首に感じる違和感。

「なんだ……コレ」

縛られている。

何だ?

何で……どうして僕は………一体,何があったんだっけ………

「ふああぁぁ……あれ,私…寝ちゃったんだ」

誰か,僕の近くで寝ていたようだ。

聞いたことのある,懐かしい声。


『園崎魅音の双子の妹,園崎詩音です』

『悟史くん,何を聞かれても黙っててください』

『あの……怒ってます………?……騙してて……』


一気に記憶が戻ってきた。

「…詩音……?」

おそるおそる,声をかける。

「え………悟史くん……………?」

ものすごい勢いで詩音は起き上がった。

「あ……やっぱり,詩音……だよね?」

「……悟史くん……!」

詩音はこれ以上ないくらい,目を見開いた。

目の前で微笑む顔は,間違いなく待ちわびていた愛しい人のそれで。

いつの間にか,目から涙が溢れ出していた。

「悟史くん……よかった……覚えててくれた…」

「むぅ……何言ってるんだよ,詩音。覚えてるに決まってるだろ」

「…あ……」



悟史くんだ………



詩音はそう思った。


ずっと聞きたかった,声


ずっと見たかった,優しい微笑み。


その時,ふと思い出した。

悟史の手足が拘束されたままだということを。

「悟史くん,ちょっとまってて下さいね。今,監督呼んできますから。」

「え……うん」

悟史は不安そうな顔をする。

一人になるのは嫌だ。

……そう思った。

「大丈夫ですよ。すぐ,戻って来ますから」

にこりと笑い詩音は部屋を,出ていった。
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