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□かっこいい君。
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「おっす。澪」

いつものように音楽室の扉を開けると,律がそう声をかけてきた。

……他の部員はいない。

「律一人?」

「おう!!」

「……なんで?」

「えーっとねぇ」

律によると,唯は追試,ムギは家の用事,梓は風邪で休んでるということだ。

「よくもまぁ,そんなに重なったもんだな」

私はそう言いながら律の隣に座る。

机の上にはおそらく律が出したのであろう紅茶とクッキーがあって。

それを取ろうとしたら,律も同時にクッキーを取ろうとして,指が触れた。

「あっ……ごめん///」

とっさに手を引く私。

でも律は気にしない風に笑う。

「なんでそんくらいで謝るんだよ」

「へ?……あぁ,うん。そう,だよな。」

……恥ずかしい。

これじゃあまるで,私ばっかり気にしてるようじゃないか。



「……二人だね」



ふと,律が呟いた。

「そうだな」

「…………」

「…………」

二人の間に流れる沈黙。

でもそれは決して嫌な沈黙じゃなく。


……私は,こういう空気も,好きだ。


「ねー……澪?」

「ん?」

「たまには,こういうのもいいかもね」

「……うん」

律がくすりと笑い,私もそれに微笑み返す。

律も私と同じことを考えていたんだと思うと,なんだか幸せな気持ちになる。

律の左手が,私の右手に触れる。

私たちは自然に指を絡ませあった。


どれだけそうしていただろう。


「みおー左手貸して」

沈黙に身を委ねていた私は,少し不思議に思いつつ左手を律に差し出した。

すると,律は私の腕をつかみ,自分の方向へ引っ張った。

そんなに強い力で引っ張られた訳ではないが,すっかり力を抜いてしまっていた私の体はいとも簡単に律の方向へ向かっていた。

まぁ,そうすると,律に抱き締められる形になるわけで。

「なっ……なにすんだよ!!律!!」

そう言いながら勢いよく顔をあげると,当然,律の顔は目の前。

反射的にまた私はうつ向いた。



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