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□一番好きな表情
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今は昼休み。

魅音と詩音が何やら言い争っている。

それを眺めながら「あぁ,やっぱり詩音可愛いなぁ」なんて思っている僕はなんて詩音にベタぼれなんだろう。

魅音と詩音が並んでいても視線が向かうのはいつも詩音。

同じ顔をしていても魅音にはドキドキしないのに詩音にはドキドキする。

思い返せば,初めて会ったときからこうだった。

詩音を助けたあの日から。

学校で会う魅音にはドキドキしないのに興宮で会う魅音にはドキドキするのが何故なのか悩んでいた時期もあったっけ。



「………くん,…悟史くんっ!!」


そうして詩音との思い出にひたっていると,微かに耳に入る詩音の声。

思考を現実に戻し顔をあげると,

「………っ///びっくりした…」

ムッとした顔の詩音のドアップ。

近くで見るとますます可愛い,なんて思っている場合じゃない。

何故なら詩音が怒っているから。

「……え,と……何?」

…そう訊いたのが間違いだった。

「な……に……ですって?」

やばい,と思った瞬間に詩音から発せられた黒い声とオーラ。

「え……詩音……えとっ……!?」

「悟史くんのバカぁ!!!」

そう叫んだかと思うと,両頬に走る痛み。

詩音が僕の頬を引っ張っていた。

「ちょっ……痛」

「悟史くんのばかばかばか!!!!!さっきから私とお姉が喧嘩してても無視するし,かと思えばなんだかボーッとして違うところに飛んじゃってるし!!しまいには『何?』って!!酷すぎです!!!」

ぎりぎりと僕の頬を引っ張りながらそう言い,言い終わったら僕から手を離した。

そして,なんだか泣きそうな怒っているような顔で僕を睨み付けている。

「えーと……ごめん」

なんて返せばいいのか分からなくて,困りながらもそう言うと,詩音はちょっと考えてから

「……何,考えてたんですか?」

「え……えー……」

何,って。

詩音のことなんだけど。

そんなこと言うの恥ずかしすぎる。

しかも,本人に言うなんて。



………無理!!!



「悟史くーん?まさかえっちぃこと考えてたんですか?」

「……むぅ……圭一じゃないんだから」

「じゃ,何考えてたんですか?」

詩音は僕の目をじーっとみつめてくる。

言わないと許しません,そんな感じで。

「だっ……だからぁ!!詩音って可愛いなあ……って!!」

仕方なく,本当のことを言う。

詩音の目をじっと見たまま,は無理だったけど。
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