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□オプションはとびっきりの笑顔
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バレンタインデー。
好きな男の子がいる女の子にはとても重要なイベントである。
もちろん私、園崎詩音も彼氏がいる身としては何もしない、というわけにはいかない。
そして今年のバレンタインは日曜日。
……つまりは二人きりでラブラブするチャンスなわけで。
折角だから明日のバレンタインはデートも兼ねようと、そう決めた。
後は悟史くんに電話して、明日の予定を聞いて(もちろん空いているはず!)。
明日の準備をして寝るだけ。
―――――――――――
翌日。
いつになくすんなりと早起き出来た私は洋服を着替える。
もちろん普段よりも可愛い格好で。
そして悟史くんに渡すチョコレート味のシフォンケーキを作るために家を出た。
「……こんにちはー」
場所は変わってエンジェルモート。
形式として声をかけるが返事はない。
当たり前だ、私以外に誰もいるはずがないのだから。
私は叔父さんに頼み込んで開店前の間だけエンジェルモートの厨房を使わせてもらうことができるようになった。
家でもシフォンケーキ作りはもちろんできるのだが、こっちでやる方が本格的なものが作れる気がして。
まぁ、一応練習として家でも二度シフォンケーキを作った。(だって悟史くんにあげるものを失敗なんてできない)
そのお陰で完璧に作り方やコツを覚えたシフォンケーキを作り始める。
そして数時間後。
やっぱり本格的なオーブンは違うなぁ、と感嘆の息をもらす。
オーブンから出したシフォンケーキの焼き上がりの綺麗さは家で作ったものよりも格段に上だ。
味は変わらないと思うけど、やっぱり見た目が美しい方がいい。
それを冷めないうちに袋に入れる。
時間はちょうど10時になる15分前。
約束の時間は10時なので私は最後に軽く髪を整えたりして待ち合わせ場所であるエンジェルモート前に出た。
「……詩音!!」
しばらくして。
私の姿を見付けた悟史くんが駆け寄ってきた。
「……待った?」
「いいえ。ていうかまだ一応待ち合わせ5分前ですから、わざわざ走らなくてもよかったんですよ」
「むぅ……それは、そうだけど。こんな寒い中詩音待たせたりできないよ」
困ったように笑いながらそう言う悟史くん。
そんなささやかな心遣いに私は嬉しくなる。
「……じゃ、行こうか」
「はい!」
差し出された手に私の手を重ねながら、元気よく返事した。