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□ピンキーリング
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「あれっ、音無さん、指輪してる」

私の小指で控えめに輝く指輪を見て木野先輩は興味深気にそう言った。

気づいてくれたのはこれが二人目、一番最初はお兄ちゃん。

正直、一番最初に木野先輩に気づいてもらいたかったのだけれど、木野先輩より前にお兄ちゃんに会ってしまったのだから仕方ない。

何より、会って早々、気付いてくれたのは嬉しいし。

幸せな気持ちになりながら、えへへと笑ってみせれば、木野先輩も私に向かって笑顔をこぼした。

「可愛いね、それ」

どこで買ったの?そう聞いてくる木野先輩に女の子ならみんな知っているであろうお店の名前を告げる。

「木野先輩は、アクセとか買ったりしないんですか?」

「そうね……興味ないわけじゃないんだけど。今はまだいいかなーって。でも、そういうの見ると、ちょっと欲しくなるかも」

予想どおり、というか、私のイメージどおり、というか。

私には、装飾品で自分を飾り立てる木野先輩があまり想像出来なかった。

まあ、したらしたで可愛いと思うのだろうけど。

飾り立てることしない素のままの可愛らしさが、私はとても好きだった。

「今度、一緒に見に行きませんか?」

「え?」

「なんか、買いに。行きましょうよ、指輪でも、ネックレスでもいいですから」

一緒にお買い物に行く想像をして、なんだかワクワクしながらそう誘いかける。

木野先輩は、そんな私の様子が面白かったのかくすくすと笑った。

少しだけ恥ずかしくなってしまったけれど、彼女の笑顔に胸がきゅんとした。

「そうね。今度行きましょうか」

「やったあ‼」

「そんなに喜ばなくても……あ、お揃いのとか、買ってみたりする?」

「、」

木野先輩は、なんとはなしに言ったのだろう。

深い意味は、ない。

それでも、わかっていても、嬉しくなってしまうのだ。

お揃いか、なんだか恋人同士みたいだなー。

木野先輩がそう呟いたのにどきりとした。


「指輪ってさ、どこにつけるかで意味があるんだよね」

不意に話題を変える木野先輩。

初耳だ。

へぇ、と声を上げれば、木野先輩はさらに続けた。

「例えば、音無さんが今している右手の小指ね。好感度を上げたいとき、自己アピール、とか秘密を守りたい時や自分の身を守りたい時、現実的なお守りにいいらしいよ」

「……詳しいんですね」

「ふふ、実はね。こないだ調べたばっかなんだ。テレビで聞いて面白いなって思ってね」

「へぇ、」

何も考えずにつけていたけれど、そういうことを知ることで、楽しみが広がるのかもしれない。

私も今度調べてみようかな。

私はそこでふと思いついて問いかけた。

「木野先輩は、つけるんなら何処にするんですか?」

私の突然の問いかけに、木野先輩は少し視線を落としてから、私を見上げて。

「秘密、ってことで、お願いできない?」

悪戯に微笑む木野先輩に、なんですか、それ。そう返して苦笑する。

左手の薬指でなくてもいい。

木野先輩に似合うような可愛らしい指輪をいつかプレゼントしたいな、なんて、ぼんやりと考えた。

















2011*04*15




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