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□結局そんなもの
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ラクスとカガリの提案で、俺たちは同時に休暇を取って少し遠くのラクスの私有地である海に来ていた。

行く場所の候補としては他にショッピングセンターや、遊園地等もあったのだが、女子組に振り回される可能性が一番低いので、海に。

ショッピングセンターに行ったりなんかしたら、荷物持ちをさせられて終わるに決まっている。

折角の休みだ。

極力キラと共に過ごしたいと、そう考えていた。

「あ、ねぇアスラン。この海魚いるよ」

「……食えるやつか?」

「え、今僕可愛いとか、そういう意味で言ったんだけど」

「キラ、泳ぎませんの?」

「今日はやめとく」

そんな風な会話を交わす。

久々の空気にほっと息を吐いたのも束の間。



――パァン!!

鋭い銃声が、空気を震わす。

その弾は、限りなく俺に近い位置を通過していった。

条件反射で避けれたから良いものの、そうでなければ腕にかすっていたであろう。

はぁ、ため息と共に訪れる、微かな頭痛。

折角の休み……なのにな。

「アスランっ、大丈夫!?」

「あぁ。それより、カガリたちは」

「カガリがラクス連れてったよ」

そうか、と、今度は違う意味で息を吐く。

このような場にある程度慣れているカガリならまだしも、ラクスがいるには危険すぎる。

ラクスがこんなことにに臆することはないと思うが、危険なものは危険なのだ。

「……誰狙いかな?」

キラがそう小さく呟いた。

次の瞬間、茂みから現れた男。

人数は今のところ、二人。

おそらくこれ以上増えることはないだろう。

俺たちに二人でかかってくるだなんて、自分に自信があるのかそれとも馬鹿なのか。

もしかしたら、死ぬぐらいのつもりで来ているかもしれない。

なんにしても、この人数なら余裕で相手出来るだろう。

「さぁな。とりあえず向こう行くぞ」

そう言って駆け出す。

キラは「向こうってどこ?!」だとか叫びながらもしっかりと着いてきていた。

確かこっちに、という曖昧な記憶だけに頼り、足を進ませる。

多分、使われなくなった倉庫があるはずだった。

数分駆けたところでやっと見えたそこに記憶が間違ってなくてよかったとほっとした。

捕まえる分には、狭い方が勝手がいい。

幸いにも倉庫の入り口は開いていて、そこに入れば思ったよりも荷物が残っていた。

これなら、隠れるのにも十分だろう。

「キラ、」

服の中に忍び込ませてあった拳銃をひとつ彼に手渡す。

使えないのは承知の上だ。

ないよりはましだし、牽制ぐらいにはなるかもしれない。

キラはそれを受けとると、戸惑いがちに俺を見た。

「え、なんで持ってるの」

「念のため、な。キラはここで待ってるだけでいいから。危なそうだったらそれ撃って」

「何言ってるの……?僕も出るに決まってるじゃない」

「………はぁ?」

何言ってるの、その言葉をまんま返してやりたい気分だ。

キラが、出る、って?

まぁこの場所だと『出る』という単語は微妙に不的確な気がしないでもないが、それは置いておいて。

「キラ、拳銃苦手じゃないか」

「苦手だけど出来ないことはないし」

「危ないから下がってろよ」

「危ないのは君だって同じじゃないか。それに僕、君に守られるほど弱くなんてないし、銃だって多分、使おうと思えば」

「確率的な問題だろう?それに、そんな博打みたいな状態で撃ったらいけないし……ていうか、失敗して撃たれたらどうするんだよ」

俺がそう言い返せば、キラはぎゅ、と唇を結んだ。

諦めたか、よかったと思った、が、しかし。

「平気だよ」

妙にきっぱりと呟かれたその大丈夫が、何に掛かるのかよく分からなくて、聞き返せば、今度は俺の眼を見据えて、言い切る。

「撃たれても相当当たりどころ悪くなければ死なないと思うし」

「……あのさ、」

そういう問題じゃ、ないんだけど。

そう続けようと思っていたが、キラは遮るように言葉を発した。

「……多分僕……君よりは身体丈夫な……はず、だし」

「どういうこと?」

身体を鍛えている訳でもないキラが俺より丈夫なわけないじゃないか。

ゴニョゴニョと辛うじて聞こえる程度にその言葉の真意が分からなくて、焦りながらもまた聞き返した。

いつさっきのやつらが来るか分からないから、出来るだけ早く体勢を整えておきたい。

「僕、その……スーパーコーディネーター……ってやつ、だから」

あーそう、スーパーコーディネーター、ね。

「………………はぁ?」

思わずキラの方を思いっきり振り返る。

少々大きな声が出てしまったのも仕方ないだろう。

「スーパーコーディネーターって、何」

「ん、と。僕にもよく分かんないんだけど、コーディネーターの強化版みたいな。最高のコーディネーターとか言ってた」

開いた口が塞がらないってこういうことを言うのだろう。

衝撃の事実に言葉を忘れそうになる。

「……ていうかさ」

しばらく置いた後、やっと俺の喉は機能し出した。

感情が高ぶっているのを、極力出さないように話す。

「何でそんな大事なこと、今言うわけ」

長い間共にいたのだから、そういうことはもっと早く言って欲しかった、とか思ったりするわけで。

しかしキラは視線を斜め下に向けながら、だって、と。

「……君と同じじゃないって、知られたくなかったんだ」

「なんで。それで俺がキラに対して反応変えると思った?」

そう言うとキラは、驚いたようにこちらを見た。

つまり、そう思っていたわけだな。

キラが考えそうな事だと思う反面、俺の愛がそんなものだと思われているようで結構ショックだった。

俺はため息混じりにキラに言う。

「あのさ、キラがそのスーパーコーディネーターだったからって、俺がキラを嫌いになったり絶対、しないし。それにキラはキラじゃないか」

「……え?」

きょとんとした表情で一文字を落としたキラに、いい加減苛立って来る。

「だから、それだからって、今までのキラが嘘だった訳じゃないだろ?」

「……そう、だけど」

「お人好しで要領悪くて我が儘で。そういうの全部、演技だったわけ?」

「う……言ってることはムカつくけど、別に演技じゃないよ」

「そうだろ。キラがスーパーコーディネーターだからって……そりゃあ多少能力は上がってるかも知れないけど……」

段々何を言いたいのか自分でもよく分からなくなってくる。

なんだかんだ言いつつ、混乱しているのかもしれない。
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