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□寒さは貴方に溶かされて
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綺麗だと思った。

ただ、それだけ。

確かに寒いのは苦手なのだけれど、あまりに長時間寒いところにいると段々その感じも消えていった(これって危ないの、かな)。

だから、傘もささずに雪の降りしきるなかを歩いてみた。

足の踏みしめる感覚が、なんだか楽しくて、真っ白ななかを歩くのが、楽しくて。

どのくらいそうしていたのだろう。

急に背中をポンと叩かれ、びっくりして振り返る。

それから、自分が我を忘れて歩き回っていたことに気が付いて、なんだか恥ずかしくなった。

しかも、ぼくの背中を叩いたのは、アデクさんという最悪なおまけ付き。

穴があったら入りたい、というか今すぐ雪に潜り込んでしまいたい気分だ。

「えぇと、あの、これは……」

どう弁解しようかと焦るぼくに、アデクさんはそんなことを気にした風もなく、ぼくを抱き締めた。

……え、なんで?

「……やはり、冷たくなっておる」

「……え?」

顔を上げると、少し怒ったような顔でアデクさんはぼくを見つめていた。

アデクさんの温かさに、その瞳に、堪らなく気恥ずかしい気持ちになって、思わず目を反らした。

「チェレン、おぬし、寒いのが苦手だとあれほど言っていたではないか」

「……はい」

「それなのに、こんなところを一人で歩きおって」

驚いた、とそう言ってアデクさんはぼくを抱き締める力を強くした。

触れた身体とか声とかから、アデクさんがぼくを心配してくれていたのがよく伝わった。

嬉しいけれど、申し訳ない気持ちにもなって、小さくごめんなさいと呟く。

そうすれば、アデクさんの大きな手が、ぼくの頭を撫でた。

ひたすらに優しいその感覚が妙に恥ずかしくて、逃げ出したいような気もするけれど、やっぱり嬉しさの方が勝って。

とん、とアデクさんの胸板に頭を寄せてみれば、一瞬彼のぼくを撫でる手が止まった。

驚いているのだろうな、と、思う。

ぼくがこうすることは、なかなかないから。

甘えたくないわけじゃない、けれど。

ぼくはどうしようもなく、甘えるのが苦手だった。

チェレン、とさっきとは違う、甘ったるい雰囲気を醸し出しながら名前を呼ばれ、おずおずと顔を上げる。

視線が絡み合ったのを合図に、唇が触れた。

そのまま舌を入れられ、その感覚に身震いする。

冷えきった身体の中、口内の熱さはいつも以上で。

普段よりも、変に快感を強く受け取ってしまう。

「……っあ、ん」

一瞬開いた口の隙間から、あられもない声が出て、自分でも驚いた。

くちゅりという音が微かに聴こえて、ふとここが外だということを思い出した。

誰もいないのは分かっているけれど、羞恥は拭えない。

とうとう耐えきれなくなってぐい、とアデクさんの服を引っ張れば、やっと唇が離れた。

「、は」

「……心配させたお仕置きだ」

急になんで、と言いたいのが伝わったのだろう。

アデクさんを見上げれば、微笑んでそう言われた。

取って付けたような理由な気もしたけど、ぼぅっとした頭では反論することもできなくて。

寒いのと熱いのがごっちゃになっているのが気持ち悪かったから、とりあえず部屋に戻ろうと提案しようかと、そんなことを考えていた。












2010*12*14




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