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□仕切り直しといきますか
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「風丸!!」

待った?と少し息を上げながら笑ったフィディオに、全然、と笑い返す。

場所はジャパンエリアの一角。

今日は週に数度のデートの日だった。

お互い結構練習スケジュールが詰まっているから、そう頻繁には会えないのだけれど、どうにか合間を縫っては会うようにしている。

デート場所は日によって様々で、といっても大抵は自分たちが勝手が分かるジャパンエリアかイタリアエリアなのだが、まれに他の場所にも行ってみたりする。

イギリスエリアなんかはなかなか雰囲気があって楽しかった。

そんなことを考えていると、右手にフィディオの指が触れた。

ちらりとこちらを窺ってから、指を絡ませる。

「ちょ、」

「……やっぱりダメだった?」

「え、いや」

少ししおらしい表情でそう言われ、思わず戸惑った。

意図せずしてそれは否定の言葉になってしまい、フィディオは手を繋ぎ直す。

本当は、あまり外で手を繋いだりしたくないのだけれど。

彼があまりに嬉しそうな顔をするものだから、俺は抵抗する気が削がれてしまった。

たまには、別にいいよな、なんて誰にでもない言い訳を心に浮かべて、無理矢理自分を納得させる。

「じゃあ、行こうか」

「あぁ」

そう言って俺の手を引くフィディオはなんだか普段と違う意味で格好よくて。

毎回柄にもなく緊張してしまうのだ。



並んで歩きながら街を散策する。

「あそこは……こないだ行ったよな」

「この辺は大体制覇したかもな」

「……そうか……じゃあ、」

そんな会話を交わしながら、舗装された道を進んで行く。

ライオコット島は各エリア結構な数の建物が建っていた。

種類も様々で、生活するのはもちろん、デートするにも申し分ない。

(……しかし、)

これだけのものが、FFIの為だけに用意されたのだと思うと、なかなか凄いものだと感心してしまう。

そして、そんな大会に自分が出ているだなんてまるで夢のようだ。

「あ、風丸。あそこ行ったことないよな?」

そう言ったフィディオに促され、その視線の先を見る。

そこにあったのは。

「……あれ、スポーツ用品店なんだけど」

どこからどう見ても。紛れもなく。スポーツ用品店であった。

行ったことないもなにも、デートで行くような場所ではないから行かなかっただけだろ。

そう思って彼を半ば睨み付けるようにして見ると、誤魔化すように苦笑された。

「分かってるけど、」

一度行ってみたかったんだよ、そう言ってからお願い!と頭を下げられる。

不満がないわけではないが、そこまでされて断る訳にも行かず、俺は一つため息をついた。

「……少しだけだぞ」

「やった!」

そう言うフィディオは本当に嬉しそうで。

やっぱりこいつも、円堂に負けず劣らずなサッカーバカなのだと再確認した。

そうして、店のドアを開ける。

カランという控えめな音をバックに店内に足を踏み入れた。

と、そこで聞こえた慣れた声。

「風丸……とフィディオじゃないか」

「、円堂!?」

ついさっき思い起こしたサッカーバカが、そこにいた。

鬼道と豪炎寺も一緒にいて、会釈してから、彼らの視線が俺たちの手に注がれていることに気付く。

そういえば、繋いだままだった。

別に隠すようなことでもないけれど、なんとなく気恥ずかしくなって彼の手のひらをほどいた。

一瞬、フィディオがムッとした表情をした気がしたけど、すぐに笑顔に戻ったから気のせいだったのだろう。

「やあ、マモル。奇遇だね」

「あぁ。それにしてもびっくりだな、こんなとこで会うなんて。まさか風丸と一緒だとも思わなかったし」

何してたんだ?と問い掛けられて、ちょっとね、と答えるフィディオ。

円堂はふーんと呟いただけでそれ以上詮索しては来なかった。

「おい、円堂、そろそろ行かないか」

「ん?あぁ」

その場で話し始める二人を見て、俺に気を遣ったのだろう。

鬼道はそう言って店を出ようとした。

「あ、そーだフィディオ、風丸。今から三人で飯なんだけど、一緒に来ない?」

「……な、」

しかし、円堂はそんな誘いを持ち掛けてきた。

自分の気遣いを無にされた鬼道はショックな様子で固まり、円堂を見る。

俺は苦笑しつつ、断ろうと口を開いた。

「悪いけど、俺たちは――」

「いいね、案内してよ」

「……は?」

しかしそれは、今度はフィディオによって遮られる。

まさかOKするだなんて思う筈もなく、フィディオにどういうことだという視線を送るも、彼は気付く風もなく円堂と話している。

……むかつく。

イライラしつつも彼らに着いていかないというわけにも行かず、俺は仕方なしに近くのファーストフード店へ向かった。





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