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□一緒に落ちようか
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綺麗なやつだと思った。

走ると蒼い髪が靡くのとか、そのあとじんわり汗が滲んでいる姿とか。

まぁ挙げればキリがないのだけれど、そのくらい全部が、ってこと。

「風丸」

「ん?」

名前を呼べば、他人受けしそうな笑顔で振り向いた。

綺麗、なんだけどね。

そのちょっとよそよそしい感じはいただけないかな。

そんな風に思っていること知るはずもない風丸は、にこにこ笑いながら首を傾げた。

なんだかちょっぴりいらっとして、彼の頬を引っ張ってやる。

「……っ、いたい、っての!」

ぐいぐいと力を入れて方頬を引き続けてると、風丸の右手が僕の左手を掴んだ。

振りほどくようにされてぶらんと落ちる左手。

風丸は酷く憤慨した様子で、僕を睨み付けた。

どうやら本当に痛かったらしく、ちょっと涙目だ。

「うん。いいね。そっちのが好き」

「はぁ!?」

思わず感想を口に出すと、今度はわけわかんない、って、そんな顔。

今日はいろんな表情の風丸が見れるなぁだなんてぼんやり思っていると再び怒った顔に逆戻り。

そんな顔も可愛い、だなんて不意に思ってしまって、思わず笑ってしまう。

まるで、これじゃあ、僕が風丸のことを好きみたい。

そう思ってから、意外とそれに違和感を感じないことに気付く。

一体全体どういうことだ。

自分でもわけが分からなくなって、どうしたものかと思案する。

急に考え始めた僕を心配したのか、風丸がひょこりと下から僕を除き込んできた。

どきり、心臓が跳ねた、気がした。

いきなりのことにびっくりしたのか、それとも。

自分でも煮え切らないむず痒さが気持ち悪くて、彼の顔をじいっと見詰める。

はっきりしないのは嫌いな性分。

自分の心を確かめたくて、既に間近であった彼の顔に更に近付いた。

一瞬、掠めとるようにキスをする。

(……あれ、)

普通だったら、やっぱり好きでもない人とキスするのって嫌なものだろう。

だけどなんだか、嫌じゃない。

て、ことは、だ。つまり僕は彼の事が好きなのかなと、一人勝手に納得していると、前から聞こえた変な声。

「な、マックス、今」

一拍遅れてどころじゃない。

五拍くらい遅れたタイミングでやっとこ彼は、キスされたことに気付いたらしい。

真っ赤になって口をぱくぱくさせている。

そんなにも狼狽えて照れる姿は初めて見た。

その表情によく分からないけど愛しさを覚えて、堪らなくなって彼の手を握る。

え?え?え?と同じ言葉を連発しながら真っ赤になって混乱した様子の彼に、笑いかけてからもう一度。


(今度はさっきより数秒長いキスを、)













2011*02*04


 

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