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□静寂に愛を告げる
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ぱさりと、ほどいた髪がシーツの上に散らばった。

薄暗い中の蒼と白のコントラストに、どくりと血が巡った気がした。

俺が掴む風丸の手首は、酷く熱い。

いや、手首だけでなく、身体全体が熱くなっているのだろう。

……勢いで、押し倒してしまったのはいいものの。

このまま事に及ぶのはどうかと思う。

お互い初めてな訳だし、何より相手がその気ではない。

風丸を見れば、その眼はなんだか揺らいでいて、不安なのは一目瞭然であった。

かちり、と時計の針が進む音がした。

そろそろ時間は深夜帯。

相手が乗り気だろうが、明日の練習のことを考えれば、ここで引き下がっておくべきなのだろう。

しかし、だ。

思春期真っ盛りなこの身体。

頭で分かっていても、理性より本能の方が強いのは、致し方ないことなのだと思いたい。

何かを訴えかけるようにこちらをじっと見詰めてくる風丸の顔に、近付いた。

触れる直前、彼は強く目を瞑る。

唇を合わせ、そのまま歯列をなぞり、舌を差し入れた。

苦しそうに眉根を寄せる風丸の頭を撫でるように触れる。

さらりと流れる髪は、見た目よりも柔らかかった。

「、ふ、んぅ」

自分の衝動に身を任せ、風丸の口腔を掻き回していると、ふと漏れた喘ぎ声。

いつの間にやら回されていた彼の腕。

声を出してしまった羞恥からか、彼の手のひらが俺のシャツを強く握った。

「ゃ、きど、」

息継ぎのほんの少しの間に名前を呼ばれ、名残惜しく思いながらも唇を離した。

つうと一瞬、銀の糸が二人を繋ぐ。

風丸は肩で息をしながら、濡れた瞳で、俺を見上げた。

暫しの間何を言おうか迷っているように口を結び、最終的に発せられたのは。

「……明日、練習だろ」

そんな、言葉だった。

「分かっている」

「だったら我慢しろよ」

そう言って苦笑する風丸。

その耳許に唇を寄せ、普段より幾分声を低くして言ってやる。

「……我慢できないと、言ったら?」

「ひぁ、」

耳に息が掛かったのに反応したのか、風丸は肩をびくつかせた。

彼は俺の胸元を弱々しくぐいと押した。

「今日は、駄目だって」

「何故」

「……まだ、」

心の準備、出来てない。

か細い声でそう言われ、予想外の理由に思わず口許が弛んだ。

「可愛いな」

「うるっさい、」

「じゃあ、今心の準備してくれ。待ってやるから」

「じゃあ、ってなんだよ。だから、今日は、無理!!」

そう言って風丸は、きっ、と俺を睨み付けた。

残念ながら、その意思は揺らがないらしい。

俺は心の中でひとつため息をついて、彼の横に寝転がり、抱き締めた。

「、鬼道、だから……っ」

「分かっている。今日は、しない」

「だったら離れろよ」

「一緒に寝るくらいはいいだろう?」

「、」

そう言えば風丸は一度硬直して。

数秒迷った後に、真っ赤になって頷いた。


(し、仕方ないな、今日だけだぞ!)
(……明日は寝かさないでいいと?)
(は?!違うから……っ!)














タイトルはM.I様より

2011*02*05


 

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