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□耳元で呟いて、吐息で囁いて
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たまに冷静になって、何処が好きなのかと考えてみる。
一応、俺のタイプを言うならば、ありきたりではあるかもしれないが、大人しい感じの可愛い子な訳で。
吹雪がそれに該当するかと考えれば確かに当てはまるような気がしないでもないのだが、何分、それは見た目だけの話。
中身がどうかと問われれば、結構腹黒かったり、自分の意思を曲げないところがあったり。
到底『可愛らしい』とは形容し難かったりする。
かといって俺が吹雪のどこを好きかと考えれば、容姿ではないことは確かなのだ。
「風丸くん、」
二人きりの室内で、低く甘く名前を呼ばれ、ぴくりと身体が反応した。
吹雪は俺と密着するように並んで座ると、不意に手を伸ばして俺の頬に触れた。
それから、くすりと微かに微笑んで。
「すきだよ」
囁くように、しかしはっきりとそう告げる。
耳の奥がじんと痺れるような感じがして、反射的に目を瞑った。
そんな様子を見て、吹雪が小さく笑ったのだろう。
微かに空気が震えたのを感じて、そうしている間に、彼の指が閉じた瞳の輪郭をなぞった。
なんとも言えないむず痒さに、吹雪、と咎めるように呼んでみるも、彼の方は空返事。
「なぁに?」
本当に何がいけないのかというような声色でそう返され、はぁとひとつため息をついた。
惚れた弱味、なのかは微妙であるが。
俺は、とことん吹雪に弱かった。
その繊細な指先とか、甘ったるい笑顔とか、少し低めに響く声とか。
弱いと同時に全部好きなのだからどうしようもない。
するすると顔の上を滑る指を今更止める気にもなれず、そろりと瞳を開ければ、楽しそうな吹雪の顔。
「……これ、そんなに楽しいか?」
「うん」
「へぇ」
「好きな人に触れてて、楽しくないはずないでしょう?」
そう言って柔らかく微笑む吹雪の顔を直視してしまい、思わず体温が上がった。
俯きながら恥ずかしいやつ、そう呟けば、そうかな、と愉快そうに返す吹雪の声。
それが妙に近かったものだから、驚いて顔を上げてしまった。
きっとそれも、吹雪には予想済みの反応だったのだろう。
気付けば彼の顔は真ん前で、身を引く前に引き寄せられた。
啄むようなキスを数度した後、おまけとばかりに頬にも唇が落ちてくる。
それから、いつもの蕩けるような笑みを浮かべて。
「すきだよ」
「……知ってる」
「風丸くんは?」
「……、すき、だよ。知ってるだろ」
恥ずかしいながらもそう言えば、本当に嬉しそうにするものだから。
(その顔にも弱いだなんて、気付いてはいない筈だけど)
タイトルはM.I様より
2011*02*07