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□その先のことはまたいつか
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女子にも男子にも好かれていて、成績だって悪くない。

もちろん先生からの評判だっていい方である風丸が。

「、好き、なんだ」

特にこれといった取り柄のない、普通、という言葉が何よりもしっくり来る(自分で言って悲しくなるな)、俺を?

理解し難い現状に、冗談か何かだと思ってもみるが、風丸はこれでもかというくらい真剣な顔をしていて、そうではないと理解してしまう。

風丸はじいと此方の様子を窺っているようで、少し上目遣いで俺を見つめている。

普段見ないようなしおらしい様子に思わずたじろぎつつも、答えようと口を開いた瞬間、彼がびくりと震えた。

心なしか目にうっすら涙が溜まってすらいる。

普段の気丈なお前はどうしたんだ、そう言ってやりたくもなったが、口に出せば泣き出してしまいそうだ。

「あ〜え……と」

返答をしようにも上手い言葉が出て来ない。

何を隠そう、告られるのなんて初めてなのだ。

しかもそれが、男、だなんて、対処の仕方が分からない。

そもそも俺はイエスかノーかすら決めかねていて。

風丸のことは好きだけど、それが恋愛感情かと問われればきっと否。

風丸のことを女みたいに思ったことがある、これも否……と、言いたいところだが、こちらはちょっとだけ、ある。

まぁ、風丸が求めているのはそういうんじゃないだろうけど。

そこで俺ははたと気付く。

風丸は何で俺に告白したんだろう。

「、のさ、風丸」

「?」

「例えば、俺と付き合ったと、して」

どうしたいの?そう問えば風丸は数度目を瞬かせた後に、ふいと視線を反らした。

「……それは、その。…………手繋いだり、とか」

散々ためた後に言ったのがそれだったものだから、俺は少し拍子抜けしてしまう。

ついでに机の上に放られている風丸の手を握った。

最初は握手をするように。

それから、所謂恋人繋ぎというような感じで指を絡めてみた。……これはちょっと恥ずかしいかもしれない。

「は、半田?!」

たったそれだけの事なのに、狼狽える風丸が可愛くて、思わず笑みを漏らしてしまった。

「このぐらい、恋人じゃなくてもするだろ」

「そ、それは、そうだけどっ」

風丸は半ば叫ぶようにそう言ってから、諦めたようにため息を吐いた。

「そうだよな……うん。そういう、ことだよ」

一人納得するように呟く風丸に首を傾げる。

何が、と訊けば、彼は指をほどきながら、小さく笑った。

その、今にも泣き出しそうな儚い笑みに、胸の奥が苦しくなる。

「……俺にとったら特別なことも、半田にとったらそうじゃない。つまり、そういう違いなんだ」

分かりにくい言葉で、しかし自分では完結しているらしいことを言われ、思わず彼の腕を掴んでいた。

そうしなければ、きっと次の瞬間には彼は回れ右をしていた筈だ。

「……分からないよ、ちゃんと説明してくれないと」

俺、頭悪いからさ、なんて笑いながら付け加えてみるも、風丸は複雑な表情を崩さない。

「好きだから、俺は手を繋いだだけで嬉しい。けど、半田はそうじゃないんだろ?」

「、」

「……ごめん。今日のことは忘れてくれ」

「風丸っ、」

俺の手を振りほどこうとするのを、力を込めて阻んだ。

好きなのかは、分からない、違うと思ったのは、ついさっき。

なのに、それなのに。

ごめんと言われて、彼が俺から離れようとして、それが嫌だったのは何故、?

俺は風丸を抱き締めた。

殆んど変わらない身長、彼が息を飲むのが伝わった。

「、なに」

戸惑った風丸の声に、返す言葉が見つからない。

好きだと言ったら、嘘になるような、気もする、だけど。

「俺は、風丸と、一緒にいたい。……付き合うとかは、よく分かんないけど」

ずるいと自分でも思ったけれど、今の素直な気持ちはそれだった。それだけだった。














2011*02*09



 

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