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□ぼくのしあわせがわらった
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似ている。それがきっと、俺と彼が惹かれ合った理由。

いつからか、お風呂上がりに彼が俺の部屋に来るのが当たり前になっていた。

何をするかはその時次第。

ただいるだけで何も会話を交わさなかったり、はたまた他愛もない雑談に花を咲かせたり。

たまにはサッカーの話を大真面目にして。

時折身体を重ねたりも、する。

恋人同士、とはどちらも告白していないから言えないと思うけど、俺たちの関係はそれに近いものだった。

セフレと言うには、お互い相手に好意を持ちすぎている。

いや、まぁ、彼から直接聞いたわけではないけれど、多分、そう。

「ヒロト、」

そしてどうやら、今日は彼の甘えたい日、らしい。

ねだるように見上げられ、その表情にどきりとした。

下ろした髪は乾ききっていなくて、触れるとしっとり濡れていた。

そのせいか、普段とは違う、妖艶な色気を感じる。

もちろん気分の問題もあるのだろうけど。

彼の望み通りに唇を寄せた。

柔らかな唇に触れると、風丸くんは心地よさげに目を閉じる。

そして誘うように微かに唇を開けるのだ。

慣れた動作で舌を差し込むと、彼もそれに応えてくる。

「――ふ、」

時折漏れる声。

動作は積極的であるのに、彼の手はしがみつくように俺の背に回されていた。

耐えるように、握り締めている、そういうのがなんだか、堪らない。

くちゅりと小さく水音がする。

それはそんなに大きな音ではないはずだけれど、嫌に鼓膜に反響した。

ゆっくりと唇を離せば、風丸くんは肩で息をしていた。

腕は俺に回したまま。

その瞳は欲に濡れていて、そこに写った俺も、似たような顔をしていたものだから笑ってしまった。

「、ふふ」

「……ヒロト?」

どうかしたのか?と問い掛けてくるように首を傾げて俺を見る風丸くんに、微笑みかける。

「ううん、なんでもないよ」

そう言えば風丸くんは一度納得するように視線を落としたあと、今度は求めるように俺を見た。

口に出さなくても伝わるせいか、彼はこういった類いのことを口に出して求めはしない。

単に照れているだけかも分からないけれど。

たまに口に出すように強要してみたりもするけれど、今日は別段そんな気分でもない。

素直に再び口付けながら、彼をベッドに押し倒した。

「ぁ、ヒロ、ト」

「ん?」

「……いや」

「そう」

風丸くんは一瞬、何かを言おうと口を開いたが、思い直したように、口を噤んだ。

何を言おうとしたのかは、おおよそ分かる。

好きだ、とか、そういう言葉。

別に言ったって構わない筈なのだけど、あまりそれを口に出さない、いつからか二人の間の暗黙のルールみたいになっていた。

「風丸くん」

極力優しく名前を呼んで、彼に笑いかける、そうすれば彼も微笑み返す。

それが俺たちの愛情の確かめ合い方だった。













タイトルはM.I様より


2011*02*12



 

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