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□唇に遺る熱を冷まして
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彼はさみしがり屋なのだと思う。

ぼくとの関係が恋人へと昇華した途端、それはもう、無遠慮に、鬱陶しいくらいに、ぼくにくっついてくるようになった。

ぼくが嫌がっても彼の方は悪戯めいた笑みを浮かべて、いつも言うのだ。

「ボクのこと、好きなんでしょう?だったらいいじゃない」

「……あのねぇ」

Nのことは好きだ。

好きだけれど、だからといって何をされても許せるかと言えばまた別の話。

元々スキンシップは得意でないのだ。

いくら恋人だからといって、無闇に触れられるのは正直あまり好ましくない。

きっちりとそう言ったものの、Nの方は「でもボクはこうしていたいんだ」と。聞く耳持たず。

相手の欲求をまるで無視な恋人に、なぜ愛想を尽かさないのか。

正直自分でも甚だ疑問であるわけだが、何だかんだで満更でもないぼくもいるのだろう。残念だ。

「チェレンはさ。なんで触られるの嫌がるわけ?」

「だから何度も言ってるだろ。あんまり好きじゃないんだって」

「……何で?」

「何で……って」

Nと話していると、たまに幼子の相手をしているような気持ちになる。

あんなに可愛いものではけしてないのだけれど。

「何となくだよ」

そう答えれば、Nは不満気な顔をしながら曖昧な返事をした。

それから、ふと思い立ったように、ぼくに顔を近付ける。

(あぁ、もう)

キスするときは予め言えってしつこいぐらいに繰り返しているつもりなのに。

強く抱き締められているこの状況じゃあ、逃げることも出来やしない。

心の準備も不十分なままに、ふわりと唇が重なった。

掠めとるような感覚のそれは、一瞬で離れていった。

深い方だったらぶん殴ってやろうと思ったのに。

「……チェレンって、触られるの嫌いなわりに、」

にやにやと不快な笑みを浮かべながら呟いたNの言葉に耳を傾ける。

どうせろくなことじゃないだろうけど。

「キスするの、好きだよね」

「……」

否定出来ないのは肯定の証。

彼の言う通り、ぼくは彼からされるキスがどうしてだか嫌いになれなかった。














タイトルは星になった、涙屑様より


2011*03*17



 

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