メイン5

□それさえも快楽の一要素
1ページ/1ページ


※ちょっと注意




風丸さんの白い肌に浮かんだ赤い痕は、僕の心臓を波打たせた。

ぞくり、と、背中からえも知れぬ快感が僕を蝕んでゆくようだった。

風丸さんと付き合い初めてから知ったこと。

どうも僕には、加虐嗜好があるらしい。

風丸さんの痛みに震える表情を見ると、何とも言えない悦びを感じた。

もちろん、風丸さんの笑顔とかも好きだから、単に彼の全てを見たいだけかもしれない。

「……っつ、」

風丸さんの二の腕を、つぅと切りつける。

微かに浮かび上がった傷痕から、じわりと血が浮き出した。

「……痛いですか?」

「あ、たりまえ、だろ」

濡れた瞳で睨み付けてくる風丸さんに、ぞくぞくした。

痛みと屈辱に歪んだ顔が堪らない。

つぅ、今度は僕の二の腕に刃を立てた。

風丸さんにしたのと全く同じ場所。

少し力を込めて引けば、風丸さんと同じように、じわりと血が浮き上がった。

「お前、なにして、んぅ」

信じられないといった風に目を見開く風丸さんに口付ける。

そのまま舌を絡めとれば、風丸さんの身体が震えた。

ついさっきヤったばかりだから、感じやすくなっているのだろう。

「、ぁ、やめ……っ」

暫く口腔を掻き回すようにしていると、風丸さんが僕の身体を押した。

拒絶のつもりなのだろうか。

なんにしても、突き飛ばす程の力は残っていないようだった。

仕方ないなぁ、そう思いながら唇を離す。

風丸さんの口許はどちらのものかもわからない唾液で濡れていた。

すっかり力の抜けきってしまっている風丸さんは、僕にもたれ掛かるようにして、僕を見上げる。

「……宮坂、お前、ほんと訳わかんねぇ」

呟くようにそう言った風丸さんは、もう諦めているようでもあった。

「風丸さん」

「、ん」

「好きです」

「……この状況で言われても嬉しくない」

そんなことを言いつつ微かに頬を染める風丸さんに、笑みが溢れた。

僕は彼の髪をとかしながら言い返す。

「風丸さんも、結構訳わからないですよ」

こんな風にされていても、彼は一切別れようとは言わなかった。

我ながら酷いことをしているとは思うのだけれど。

風丸さん、痛いのは嫌いみたいだしマゾというわけではないのだと思うから、尚更ちょっと不思議だった。

「……俺だってそう思うけど」

でも、好きなんだよな。

小さく呟かれた声は、心底不思議そうで。

「宮坂、」

「はい?」

「切ったとこ、後でちゃんと手当てしろよ」

「分かってますよ」

にこりと笑ってそう答える。

わざわざ念を押されなくても、どうせ数時間後には、酷く良心が痛み始めて、きっちりと手当てするに決まっているのだ。

毎回同じことを繰り返している自分に時折嫌気が差すけれど、衝動的なものだから仕方ない。

殊更風丸さんに対しては、僕は本能のままに動いてしまう節がある。

それはもう、直そうと思って直るものではないと、自分のことだから正しく自覚していた。

いや、風丸さんが本気で嫌がれば、また別の話ではあるのだけれど。


(要するに半分は風丸さんのせいだということで、)













タイトルは星になった、涙屑様より


2011*03*18



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ