メイン5

□君と隣り合わせの朝
1ページ/1ページ




目を覚ますと、髪をゆるゆると梳かれる感触がした。

優しい掌が心地よくて、二度寝しそうになるのを堪えて、欠伸をした。

髪の毛を撫でていた指が、頬へ滑る。

「おはよう、キラ」

「……おはよ、」

そう言ってから瞼を上げる。

次第にはっきりしてくる視界。

最初に目に飛び込んで来たのはアスランの顔だった。

「近い」

キスしてこようとする彼から顔を逸らす。

アスランは不満気に声を上げた。

「キラ、おはようのキス」

「何言ってるのさ」

よくもまあ恥ずかしい事が言えるもんだと思う。

彼からしたら、恥ずかしい事でもないのだろうけど。

僕はもう一度大きく欠伸して、起き上がろうと身体を起こした。

朝食でも作るかな、そんな事を考えていると、アスランに腕を引かれた。

振り向くと同時に、腕を引く力が強くなって。

ぼすん、ベッドに逆戻りだ。

「アスラン、寝ぼけてんの?」

そうは言ってみるものの、彼が寝ぼけてそうしたのではない事くらい分かっていた。

だからこそ、逆にタチが悪いのだけど。

「折角の休日だぞ?そう急がなくてもいいだろう」

そう言って僕を抱きしめてくるアスランに嘆息する。

他の人がいるとクールに見えるのに、二人っきりだと甘えたなんだから。

僕の前だけ、だと思うと、正直嬉しいけどね。

「朝ごはん、いいの?」

「ん、まだ大丈夫」

「そう」

僕も時間通りにきっちり動きたいタイプではないから、そのまま布団に潜り込む。

たまには、ゆっくり過ごすのも悪くない。

暖まった布団の中で微睡みかけていると、ちゅ、と額に唇を落とされた。

それから、密着するように抱きしめられる。

別段嫌な訳でもないから大人しくされるがままにしていたら、調子に乗ったアスランが顔中にキスしてきた。

「ちょっと、」

流石にむず痒くて身を捩る。

「嫌がらなくたっていいだろ」

「朝からこんな事よく出来るね」

嫌味半分にそう言うも、アスランには思ったように届いていなかったらしく。

朝も夜も関係ないだろう、なんて平然と返されてしまった。

今日はずっと一緒にいるんだから、朝からキスなんてしなくても、と僕は思うのだけれど、アスランからしたら丸一日僕といちゃつくつもりなのだろう。

ま、いいか。

ここ最近忙しくてあんまり恋人らしいことしていなかったし。

アスラン程ではないにしろ、僕もちょっとは寂しかったから。

「アスラン、今日何する?」

「家でずっとこうしているんじゃ,駄目か?」

暫く考えてからそう返したアスランに、ううん、と首を横に振る。

考える事は一緒みたいだ。

それがなんだか可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまえば、アスランは不思議そうに僕を見た。

それから、つられたように吹き出した。

二人分の笑い声が密やかに部屋に響く。

なんだか、バカみたい。

だけどそれが楽しくて……幸せで。

こんなんでいいのかな、ってふと思った。

平和ボケしてるみたいで、変な気分になる。

だけどこれでいいんだと、自分自身に言い聞かせる。

だって、これが、何よりも。

僕が手に入れたかったものなのだから。











2011*03*25




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ