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□もう少し,このまま
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「……悟史…」

「…………何?詩音」

俺は目の前にいる少女の髪の毛をいじりながら名前を呼んだ。

返ってきたのはそっけない返事。

いや,まぁそうだろうと思いましたが。

「……悟史…そろそろ機嫌直してくださいよ」

「…………」

……ヤバい。本気で怒ってる。

事の発端は今日の部活。

今日の部活は二人一組での勝負だった。

そして,最下位だったのが悟史&圭一組。

もちろん優勝は俺と兄貴……もとい魅音のコンビ。

そしてバツゲームはメイド服を着てメイド言葉で優勝組の言うことを聞くというもの。

いや,あのときの悟史は最高だったな。

じゃなくて。

そして,そのバツゲームでの事。

圭一のメイド姿を見て真っ赤になりながら完全に硬化しているお兄をからかうつもりで圭一にちょっかいを出したのだが………

うん。流れで分かるだろうが,それを見て怒ったのはお兄だけではなかった。

悟史までもが機嫌を損ねてしまったのだ。

「……悟史…2時間もろくに口きいてくれないと流石に辛いんですけど……
折角二人きりなのに。」

「詩音どいて。ご飯作るから。」

「あ……手伝います」

「…じゃあコレの蓋開けて」

ちょっと会話が続いたことに喜んでいられたのはほんの一瞬だった。

コレ……と言って悟史が俺に差し出したのは。



……缶詰。



悟史は見た目にはよく分からないが想像以上にキレているっぽい。

「え……と,悟…史…これはちょっ「手伝ってくれるんじゃないの?」……はい」

普段おとなしい人が怒ると怖いっていうのがとてもよく分かる。

「ねーねー!ただいま〜〜!あれ,にーにーまだいたんですか?」

いつもは小生意気な少年の声が天使の声に聞こえた。

部屋のドアが開く。



……黙って料理をしている悟史と缶詰を手に立ち尽くす俺。



これを見た沙都子は一瞬にして状況を悟ったようで,俺を部屋の外に引っ張りだし(と,言っても沙都子が服を引っ張るのでそれに付いていっただけ)
他の部屋に連れ込むと。

「……まだねーねーと仲直りしてないんですか?」

「悟史かなり怒ってるみたいでして……」

そう言う俺に対し,沙都子は「はああぁぁぁ〜〜」と盛大なため息をついた。

「何のためにわざわざ梨花の家に行ったと思ってます?」

「…………」

「…仕方ないですね」

沙都子が次に放った言葉は。

「詩音さんはもう帰ってくださいませ」

帰れって……

「でも……」

「心配しないで下さいませ。あとは僕がなんとかいたしますので」

まぁ,そんなこんなで俺は家に帰ることに。

と言っても,両親がいる家には帰る気がしなかったので,マンションの方に帰った。

―――――――――――
――――――
「はあ〜〜ッッ!?マジで?」

「……本当だよ。」

「ふへぇ……悟史が……いや〜〜意外だねぇ」

家に帰ってきて暫くして魅音が家に来た。

そして悟史との事を魅音に話した。

悟史がだんまりを決め込んでいたと聞いて魅音は相当驚いた。

「………で?沙都子がなんとかするって?」

「あぁ……」

「……大丈夫だよ,詩音。沙都子が何とかするって言ってんだからさ。」

魅音は魅音なりに俺のことを心配していたのだろう。

「サンキューです。
そういえば,お兄今日泊まってくの?」

「あぁ。悪ぃな」
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