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□本当は、ずっと
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僕は部屋を見渡す。

中にはたくさんの(高級そうな)料理が並び、壁には装飾が施されていた。

そして壁の一角にボードが掛かっていて、そこにでかでかと書かれた文字。


「誕生日おめでとう,恭弥。」


ふわりと目の前に差し出された大きな花束。

「、」


そう。


今日は僕の誕生日だ。



「……忘れてた」

「……はぁ?!恭弥……自分の誕生日ぐらい覚えてろよ」

「誕生日なんて僕には関係無いからね」

忘れてたというのは嘘、だけれど、重要視していなかったのは事実。

誕生日だからって特に変わったことをすることも、今まであまりなかったし。


「……誕生日、ね」


僕はもう一度部屋を見回して呟く。

「入れよ。料理冷めるぞ?」

ディーノは僕を中へと促す。

ディーノの部下とすれ違う度に「おめでとうございます」と言われるのになんだか不思議な感覚がした。

僕達が部屋に入るとディーノの部下達は出ていった。

「ほら、何か食べろ」

ディーノに言われて、たくさんある料理の中から適当に選んで食べる。

「いただきます」

……僕には味の違いはそんなに分からないけれど、おいしいと思った。

「そーいえば恭弥」

「何?」

「欲しいものとかあるか?」

「……何で?」

ここでそれを訊いてくる理由が分からずに聞き返す。

「誕生日プレゼント。何がいいかなって」

……今のコレは誕生日プレゼントではないのだろうか。

ズラリと並ぶ料理を見て思う。

まぁいいか。

欲しいもの……。

僕は考える。

けど、全然思い付かない。

元々そんなに物欲がないし、それに改めて訊かれるとなかなか欲しいものというのは出てこないのだ。

「特にないよ」

「……そうか?……じゃあ食いたい物とか」

「今、食べてるじゃない」

ディーノが用意していた料理の種類は本当に多く、ここにない料理を挙げろと言われてもなかなか出てこないぐらいだ。

そしてディーノはもう思い付くことがないらしく。

「え〜……」

そう言って黙ってしまった。


「……一つだけ、あるよ。欲しいもの」


「お?何だ?」

「……貴方」


「…………え?」

何故か戸惑うように目をさ迷わせるディーノ。

「……だから、僕の誕生日には毎年ちゃんと来てって言ってるの」

「………あぁ!!そうだよなっ!!」

その威勢のいい返事は、とてもわざとらしかった。

……どーせ変な勘違いでもしたんだろうけど。
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