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□甘さは控えめに
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「えーと、これにこれ。それと……。」

調理室につくやいなや手際よく材料を用意し始めたルッスセンパイ。

この分だと隅っこにいればいつの間にかお菓子が出来上がっている、そんなこともあるかもしれない。

「フラーン?そんなとこいないで早くこっち来なさいよー」

……というミーの考えは甘かったらしい。

「……はぁ」

「はいはい。じゃあ一応これ、作り方ね」

そう言って渡してきたのは"クッキーの作り方"と手書きでかかれた紙。

……用意周到すぎる。



―――――――――――

数時間後。

「あとは、これを焼いて終わりね」

形作られた生地を並べたプレートをオーブンに入れて、満足気な表情をするルッスセンパイ。

「……むー」

「?どうしたの?」

「……やっぱりルッスセンパイの使っちゃダメですかー?」

「ダメ」

「うー……」

多分生地自体は全く同じ作り方したのだから、味は、変わらないと思う。

でも…………

「形がなぁ……」

オーブンを覗き込みながら呟く。

見ただけでどっちが作ったか判るほどの形の違い。



……正直まさか自分がここまで不器用だとは思わなかった。



「そこまでへこまなくたっていいじゃない。初めてなんだし、あれで上出来よ」

「へこんでなんてないですー。」

……これは、事実。

へこむというより、ムカついている。

わざわざ誕生日にお菓子、なんて、ミーらしくない。

「……あー……」

一瞬でもベルセンパイにプレゼントを、なんて思った自分が憎い。

「ほら、焼き終わったわよー」

そうこうしてるうちに、クッキーは焼き上がり、ルッスセンパイによってプレゼント用にコーディネートされていた。

「ていうか、何ですかこのピンク一色のラッピング。気持ち悪いんでもっと普通のにしてください。」

袋もピンクでリボンもピンクなんて、こんなの渡したらミーの感性が疑われてしまう。

……ルッスセンパイも今のはさすがにただの悪ふざけだったらしく、あっさりと違う袋に入れ替えてくれた。

「ほら、じゃあこれね。」

さっきよりは幾分マシになったお菓子の袋を持たせ、がんばるのよ〜なんて言ってくるルッスセンパイ。

………何をがんばれと?
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