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□暖かな体温
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そのあと鬼道が着替え始めたので俺も着替えて。

そんなに時間がたたないうちに円堂たちも来て、練習が始まった。

――ほとんど、無意識で。

俺はよそ見をしていたらしい。

で、ボールを上手く受け止めきれずに、変な蹴り方をしてしまい。

「あー……捻挫、ですね」

湿布を張りながら音無さんが言った。

続けて木野さんが声をかけてくる。

「どうしたの?最近調子悪いよね」

「あぁ、私もそれ思ってました」

マネージャーの二人にも不調は気付かれていたらしい。

まぁ、あれだけ集中できていなかったんだから当たり前かもしれない。

「う…ん」

「……そんなに言いにくいことなんですか?」

「……そういうわけでもないけど…」

言い渋る俺にもう完全に話を聞く体制のマネージャー組。

……別に言って困ることでもないけれど、自分でもよく分からない以上誰かに話すのには躊躇いがある。

「風丸くん。選手のメンタル面での悩みを解決するのも私達の仕事だから」

木野さんがそう言う。

……初耳だ。

ちらりと二人を見るが、聞くまで動く気は無さそうだ。

どことなくわくわくしている感じもするし。

「……実は、」

腹をくくって今の状態を話す。

「……ってわけなんだけど…何か変な病気なのかなぁ…」

話し終え顔をあげると。

何故か二人とも目を輝かせていた。

そして一度俺から距離をとり、顔を近づけて話し始める。

「――どう思います?」

「何ていうか……病気っていうか、まぁ、いわゆる恋の病ってやつに似てる気もする」

「ですよねー。風丸先輩、時々って言ってましたけど、多分気付いてないだけで特定の誰かを見たとき、じゃないですかね」

……遠目だからよく分からないが。

なんか教室で女子が恋ばなとやらをしている時と雰囲気が似ている気がする。

そして二人は話し終わったのか、駆け足で俺の所へ戻ってくると。

「それって、誰かを見たときになってませんか?」

相変わらずの輝いた瞳でそう訊いてきた。

……いろいろ抜けている気がするが、言いたいことはなんとなくわかる。

おそらく、例の心臓の異常(っぽいやつ)等が、誰かを見たときに起こるのではないか、とそう言っているんだろう。

「……残念ながら、ちょっと分からない」

ていうか今までそんなこと考えもしなかった。

それを聞くと二人はちょっと残念そうな顔をしたけど、後は普段のマネージャーモードに戻って、足を見ながら暫く走るのは我慢するようにと注意して向こうの様子を見に行った。
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