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□オプションはとびっきりの笑顔
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私たちのデートは大抵どこに行くとか決まっていない。
二人で興宮の町を適当にぶらついて、たまに気になるお店があったら入るってその程度。
もちろん行きたい場所がある時は事前に行こうと決めておくのだが、なんせ小さな町である。
いくら雛見沢よりかは栄えていると言っても、やっぱり行く場所には限界がある。
……まぁ、デートなんてどこに行くかよりも、ふたりでいるということが大切だと思うから、ただお散歩するだけでも十分だ。
「……詩音」
「はい?」
「……、」
手を繋いだまま歩いてしばらくして。
何か言いたげに悟史くんが声をかけてきた。
「なんですか?」
「……あの、さ」
「はい」
「…………チョコ」
「………はへ?」
「……ちょーだい」
私の反対側の道に目を向けながら。
悟史くんは、チョコをちょうだいと言ってきた。
……顔が赤い。
なにこれ悟史くん可愛すぎなんですけど。
もちろんシフォンケーキは渡すつもりだったから、そのまま素直に渡そうかと一瞬思った。
けど、やっぱりそれじゃつまらないとふと思う。
私の悪い癖だ。
いい考えが私の頭にぽっと浮かぶ。
少し意地悪く笑いながらそれを悟史くんに言ってやる。
「……悟史くん、キスしてください。そしたらあげます」
「…………………詩音」
「はい?」
「……ここ、道のど真ん中だけど」
「そうですね」
「……人も、いるんだけど」
「……あーあ。折角悟史くんのために、シフォンケーキ作ったのになぁー」
わざとらしくそう言う、
「…………むぅ」
すると、悟史くんは真っ赤になって俯いてしまった。
……うーん。
ちょっといじめすぎたかなぁ。
私は悟史くんの困った顔が好きだ。
好きだけど、嫌われるのは絶対に嫌だから、やっぱりいいとそう言おうと思った。
その時。
「……今回だけ」
そう呟く声が聞こえたと思ったら。
唇………から少し逸れたところに感じる柔らかな感触。
やっぱり唇は恥ずかしいのか、と思いつつも高鳴る鼓動と嬉しさは押さえきれない。
だから、お礼に。
「ずっと大好きですよ」
満面の笑みで愛情いっぱいのシフォンケーキを渡してあげた。
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あとがき。