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□好きだな、って思うよ
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それは、いつものように一定距離を保った上で、各々好きなことをしている時だった。

「バーン」

不意に名前を呼ばれ、ガゼルを振り向くと、奴は手にした本から顔を上げ俺を見ていた。

「……私達は、付き合っているんだよな」

「は?」

いきなり何を言うかと思えばそんなことを呟いた。

ただ、無表情なのでそれが何を意味するかまでは汲み取れないが。

「付き合ってんだろ?」

俺はそう答える。

一応お互い相手に好意を持っていたので"付き合おう"ということにはなった。

数えられる程度ではあるが、キス……や、それ以上のこともしたことはあるし。

その他では、まぁいつも通りなのだが、ガゼルの一人の時間を邪魔するつもりはないし、俺自身、別にべったりじゃなくてもいいと思っていた。

しかし。

ガゼルの方はどうやらそうではないらしい。

ガゼルは椅子から立ち上がると、俺の方に歩み寄ってきて。

それから、俺の手からゲームを取り上げると俺を押し倒した。

「……バーン」

そう耳元で囁いた声は甘い熱を含んでいた。

「ちょっ……いきなり、何、」

「普通の恋人同士というのはもっと触れ合うものらしい」

そう言われ、やっとガゼルの言いたいことが分かる。

ガゼルはもっと普段から近くに居たいとか、そういう事なんだろう。

確かに俺達の普段の距離感は明らかに恋人同士のそれではなかった。

俺としては今までの距離を変えるというのはやはり違和感があるし、それになにより、ガゼルがあまり近くに居ると心拍数が跳ね上がってしまい、何も出来なくなるのだ。

だから。

「……別に今まで通りでもいーじゃねーか」

そう言うとガゼルは相当不満そうな顔をした。

「つれないな」

言いながら俺の頬に触れる。

ガゼルの手は、ひんやりとしていて気持ちがいいから、好きだ。

「私はもっとバーンと触れ合っていたいというのに」

「……嫌じゃ、ねーけど」

「じゃあいいだろ」

「……恥ずかしいじゃねーか、バカ」

ふい、と目をそらしながらそう言うと。

ガゼルは驚いたようでほんの少し目を見開いた。

「意外だな。何も言わないからてっきり嫌われているのかと思った」

「っ!!嫌いだったら…その……あんなこと、しねーよ」

そう言って思わずガゼルとのキス……とかを思い出してしまい、顔が熱くなる。

それを見て、ガゼルは面白そうに笑った。

何だか馬鹿にされているようで腹が立つが、それ以上に滅多に見ることのないガゼルの笑みに胸が高鳴る。

さらにガゼルはクスクスと笑いながら体重を全部俺に預ける形で抱きついてきた。

「おい!!ガゼル、重い!!」

「別に嫌じゃない、だろう?」

「嫌とかじゃ、なくてっ!!」

流石にガゼルを本当に重いと思うほど貧弱ではない。

が、フローリングの床に寝転がっている状態なので背中が痛い。

ていうか、何で俺が下なんだ。

……いや、それは前からだったけれども。

なんか腹立つ。

「ガゼルが下になればいいのによー」

「私にこうされるのは嫌か?」

何が、そう言おうとしたが、発することは出来なかった。

気付けば、ガゼルの顔は目の前で。

ふわりと、唇が重なった。

そのガゼルとの心地いいキスに、やっぱり俺も、普段からもっとガゼルの近くに居たいかもな、なんて。

思ったことは絶対に言わないけれど。







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あとがき。
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