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□とりあえず、
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好き、そのたった一言を言うには、俺たちの間にある友情の壁は分厚すぎる気がした。

親友、というのは、一番近いようで、恋人になるには一番遠い位置なんじゃないか、って俺は思う。

それが異性間であればきっと恋愛に発展することは多々あるんだろう。

だけど、それが同性間だった場合。

"親友"という壁はなかなか打ち砕けないものだ。

一番近い位置にいれるからこそ、その関係を壊すのに勇気がいる。

例えば、そう。

今の俺たちみたいに、放課後の教室に二人きりなんて、親友だからこそできることなんだろう。

そして今の状況、ある意味告白するにはうってつけのシチュエーション。

……まぁ、それも、異性間の、場合。

今俺がマックスに告ったとしても、笑って流されるのがオチだろう。

……いや、マックスの場合笑うどころかからかうほうに行きそうだ。

そんな俺の思いをよそに、当のマックスは楽しそうに話している。

さっきまで先生の悪口を言っていたのが、今はクラスの恋愛事情の話になっている。

正直あまり興味がないので軽く流しているが。

……にしても、俺はそういう話には興味ないけど、マックスの情報通っぷりには驚かされる。

器用くんは世渡りも器用みたいだから、人から色々教えてもらえるのだろう。

まぁ俺にそれを惜しげもなく流しているのはどうかと思うが。

「……半田ー?」

「…なにー?」

「あぁ、なんだ、聞いてたんだ」

俺が話を聞いていないと思ったらしく、ひょこりと顔を覗き込んできた。

「……そういえば、半田のこと好きだっていう子がいるんだけど」

「……ふーん」

それを聞いて感じたのは喜びではなく、ほんの少しの驚き。

自分でいうのもなんだが何から何まで至って普通な俺に好意をもつ人なんて結構奇特だ。

……それを聞いてたいして嬉しくない俺も大分異常なのだろうけれど。

結局俺が欲しいのはマックスからの好きであって、他の人のものは要らないのだ。

「……で、そこで半田に質問です。半田、好きな子、いる?」

「…………、」

急な質問に、思わず何を答えるでもなく、目を反らした。

そして、速攻でいないと答えればよかったと後悔。

無言は肯定と一緒だから。
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