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□愛してると囁いて
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昼休みが終わった後、最初の授業。
空腹も満たされ、気温も暖かく、さらにポカポカとした陽気が降り注ぐ席であったら睡魔が襲ってこないはずもないだろう。
それに元々佐久間は授業を真面目に受ける気もあまりないし。
そんなことを思いながら隣の佐久間が寝ているのを見て、ふと、俺は笑みを溢した。
今は移動教室で普段使用している教室ではなく、科学室で授業をしている。
四人用の机に俺と佐久間は二人。
席は自由で言われていたので一番端を二人で取った。
別に他に誰か二人相席してももちろん問題はないのだが、たまたまか俺たちに気を使ったのかは分からないが、結局二人で四人用の席を使うことになった。
「……んぅ」
もぞりと体を動かしながら寝息をたてている佐久間。
その寝顔は年齢と同じか、もしかするとそれより幼く見えるようなあどけない顔。
見ていてとても微笑ましい。
佐久間の分まで授業のノートをとりながら、ボーッとその寝顔を眺める。
俺の座っているところも条件は佐久間と同じだから、俺も眠くなる。
まぁ、俺には授業中に堂々と寝れる度胸はないから、少しうとうとするだけで止まるのだが。
それにしても何でコイツは授業中にこうも爆睡できるのだろう。
呆れ半分羨ましさ半分。
佐久間がほとんどの授業を聞かずにいるのに成績が中の上辺りなのは間違いなくノートをとっている俺のお陰だ。
まぁ、これを始めてから一度もその事に感謝されたことはないが。
いや、もしかしたら感謝しているのかもしれないが、なにぶんこの恋人は素直に好意を口にすることがほとんどないから。
そんなことを思いながら、二人分のノートをとり、佐久間の寝顔を眺め、を繰り返す。
何度目かは分からないが、ノートをとっている時。
「……源、田」
小さな声で名前を呼ばれ、起きているのかと佐久間を見るが、その背中は規則的に動いていて。
あぁなんだ、寝ているのか、と思いつつも寝言で自分の名前が出たことについつい頬が緩んでしまう。
「……好きだ」
ふと呟くと、佐久間が一瞬ぴくりと反応した気がした。
数秒して。
「……俺も、好き、だ」
微かに聞こえる佐久間の声。
体制が変わっていないのでまた寝言かと思えば。
視界の端に映った佐久間の耳は真っ赤で。
必死で寝たふりをするものだから、その姿に思わず少し吹き出してしまう。
その後はどうしようもない愛しさが込み上げて来て。
愛してる、そう耳元で囁き、それから、そこへ唇を落とした。
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→あとがき。